掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「しばらく連絡できない」。それが最後のメールだった。2年前、大学で出会った留学生。私は彼と恋に落ちる。今日もメールは届かない。テレビのニュースが平和な春の訪れを報じてる。次いで兵士と戦車が映し出された。遠い国で戦争が続いてる。再会約束したよね。徴兵で帰国した、彼の無事を神に祈る。

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彼女の20歳の誕生日。Facebookのタイムラインに祝う言葉を書き込んだ。返信がなくなってもう3年。メッセージを送る人は年々減って、今年は彼女の姉と僕だけだ。どこかで区切りをつけないと。わかっているけど、今も彼女を忘れられない。交際中の3年前、高2の彼女は目の前で、車に跳ねられ旅立った。

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3か月前、高校の後輩に別れを告げた。受験で余裕がなく、会いたいとねだられるのが苦痛だった。合格し、僕は今さら後悔する。もう一度やり直せないかな……。通学路で彼女を見かけ、話があると声をかける。あの時泣かせた後輩が、可愛い笑顔で囁いた。「もう慰め不要です。先輩も次に進んで下さいね」

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彼と彼女の匿名垢を発見する。ともに僕の高校の同級生。やりとりを見ていると、彼女は彼の正体に気づいてる。気の多い彼はそれを知らず、SNSの「彼女」を誘ってた。やめときな。匿名で彼女にDMする。勝気な彼女はこれで逆に彼と会う。破局後に告白しよう。ずっと好きだった。同性のお前のことを。

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「同じ高2? 会おうぜ」。匿名のSNSの彼が言う。以前、彼女の話を呟いてたよね? 様子を見ていた共通のフォロワーが「やめときな」とDMくれた。けれど私は会いに行く。気持ちを確かめたいんだ。待ち合わせ場所で彼が慌ててる。「なぜここに?」。待ち人の匿名垢の女の子、目の前の君の彼女だよ。

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ママがスマホの写真を眺めてる。背後からそっと覗くと、高校生の男の子。一つ上の兄貴かと思ったけれど、もっとずっとシュッとしている。パパが太り気味とはいえ、そんなの見てたら悲しむよ。「ねえ、イケメンだよね」。そうだけど……娘としては複雑だよ。「格好良かったのよ、交際間もない頃のパパ」

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ガチでヤバいと戦慄する。貸してもらった親父のPC。深いところのフォルダーに、女子高生の褪せた写真が入っていた。僕と同じ年頃だ。お袋と仲良しだと思ってたけど、ロリコンなのか。「見られたな」。振り向くと、親父が頭を掻いている。「可愛いだろ?」。そういう問題じゃなくないか。「昔の母さん」

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「え、ランジェリー特集?」。鞄の中の女性雑誌を彼に見られる。お互い大学受験を全て終え、久しぶりの喫茶店。違うの、お姉ちゃんに借りただけ。「さすが恋愛猛者だな」。……悔しいから内緒だけれど、実は最初のキスもあなたなの。だから、これからが猛勉強。私がねだった3月の卒業旅行を前にして。

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私の送辞の後で、高3の先輩が答辞を読む。先輩に憧れて、後任の生徒会長に手を挙げた。結局、想いを告げられず、卒業式を迎えてしまう。「後輩たちを忘れません」。胸が苦しくなる。「思い出」にされるのは嫌なんだ。勇気を奮って覚悟を決める。式の後、打ち明けよう。先輩の「今」でいさせて下さい。

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放課後の生徒会室。高2の後輩が、必死で送辞を書いている。もう半月で卒業式。彼女は僕の後任の生徒会長だ。凛とした彼女の気持ちがわからずに、結局、想いを言えてない。「添削お願いします」。手渡された草稿に目を通す。……なあ、このくだりには「たち」を入れずに大丈夫? 「先輩を大好きです」

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