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「またマック?」と大学同期の彼女が呆れる。「ほかのお店もあるじゃない」。いやマックがいいんだ。「モスもバーガーキングもおいしいよ」。好きなものがねえんだよ。「何よ、好きなものって?」。そりゃ……お前だろ。僕が囁き、彼女が照れる。「……ごめん、バイト入れ過ぎた。お客様、ご注文は?」
「お姉ちゃんの彼氏もヤクザなのか」と客が言う。はい。風俗で働いて、私が借金返しています。でも今日で最後、彼と結婚するんです。「やめとけよ」。背中を洗わせながら客が呟く。その首に刃物を刺した。ごめんなさい。彼に頼まれました。敵の組織の幹部を殺れば、借金を帳消しにしてもらえるからと。
「お客さんヤクザでしょ?」。風俗嬢に尋ねられる。わかるのか。「私の彼も同業ですから」。男の抱えた借金を裸で返しているらしい。「でも今日で満額なんです。辞めて彼と結婚します」と健気に微笑む。俺が最後の客なのか。ごめんな、事情も知らず。その男、敵対組織の三下だ。さっき俺が殺ってきた。
GWに上京し、年上の彼の家を不意打ちした。半裸の綺麗な女性がいた。私は宿に逃げ帰る。「そういうヤツだったんだよ」。年下に慰められた。「良かったじゃん。別れを告げに行ったんだろ?」。好きな人が別にできた。でも躊躇いがまだ残る。同行してきた年下が私を抱き締め囁いた。「俺も好きだ、姉貴」
「……どういうこと?」。茫然と一つ下の彼女は呟き、部屋の前から駆け出した。抜き打ちでGWに上京してきた。誤解だぞ、と追いかけようとして、年上に腕を掴まれる。「解いても後で深手を負わせる」。そうかな……。風呂上りの年上が、口づけながら囁いた。「何て言うの? 姉です、僕とできてます?」
17歳の幼なじみとGWを消費する。私も彼も寂しいぼっちだ。街、海、山……。どこに行ってもカップルばかり。「ったく日帰り温泉までリア充だらけか」。最終日、風呂上りに彼がぼやく。全くだ。本当に爆発してほしい。腰に手を当て2人並んでイチゴミルクを飲み干した。お腹に沁みる。まんざらでもない。
幸せ者は爆発しろ、と呪詛を吐く。17歳の幼なじみも「カップルばかり」と顔をしかめた。俺も彼女もみじめなぼっち。GWを持て余し、2人で映画を観に行った。「繁華街は失敗ね。明日は海か山に行こう」。だな。「渋めの温泉も静かかも」。それもアリだ。なあ、リア充どもはどんな連休過ごしてるのかな?
朝焼けのさす客室で兄が微睡む。知らぬ間に異性と見てた。成人し、想いを抑えきれず、温泉宿に兄を誘う。昨夜並んだ布団で目を閉じた。覚悟を決めたはずなのに、体の震えが止まらない。「お早う」と兄が呟く。私はそっと涙を拭う。これでいい。男女にならなかったからこそ永遠だ。お早う、お兄ちゃん。
「あら、お若いご夫婦」。温泉宿で女将が微笑む。宿帳に2人並んで氏名を書いた。山奥の一軒宿は連休中でも静謐だ。「家族風呂もありますよ」と薦められ、頬を染めた彼女が俯く。前はしょっちゅう一緒に入った。どうしよう、と僕は尋ねる。同姓の彼女が囁く。「まだ進んでいいか迷ってる、お兄ちゃん」
GWの中華街は大賑わいだ。1年前、大学の初カノと食べ歩きした。「何でも本音で話し合おう」と約束したのに、嫌われることに怯えた僕は、何度も言葉を飲み込んだ。やがて僕らは破局する。今ならわかる。些末な相違は放置でいい。「あんまん食べたいな」。今カノが隣で笑う。じゃあ僕は好物の肉まんで。