掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「どんな時でもお前が好き」。優しい彼は嘘つきだ。でもいいや、と風呂上りに身を委ねる。彼が自室で隠した吸い殻に、紅がついていたのを切なく思う。そこで私の意識は途切れた。「どんな時でもお前が好き」。煙草を吹かせるあたいに向かい、彼が言う。嘘つきめ。彼から知らないリンスの移り香がする。

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3年目、惰性を感じ友だちに戻る。SNSの相互フォローは外さない。彼がラーメン写真を投稿してた。よく一緒に食べ歩き、写真を撮った。懐かしさに微笑んで、そこで気づき、いいねは押さない。交際前に好物だった、パスタの写真を私は上げよう。もう代わりがいるんだね。丼を支える彼の両手が写ってる。

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「友だちに戻ろう」。3年続いた彼女は言った。お互い煮詰まり気味だった。その後もLINEで雑談してる。今の方がずっと気楽だ。旨いラーメン屋を見つけ、教えようとLINEを開く。僕の影響で、彼女も好きになり、よく食べ歩いた。「感謝。行けたら行くね」。アイコンがラーメンからパスタに変わっていた。

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なぜわからなかったのだろう。後輩に告られた。どこに行くにも嫉妬され、スマホから異性の連絡先を消去された。元カノは逆に全く束縛せず、不安が募り、半年前に別れてしまった。「抱き締め好きと囁いて」。大学でせがむ今カノに、困惑の笑みを向ける。なぜわからなかったのだろう。あの健気な愛情が。

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何が足りなかったのだろう。半年前、元カレに別れを告げられた。交際中、飲み会は笑顔で見送り、異性とのLINEにも片目を瞑った。「1分遅刻。抱き締め好きだと言わなきゃ許さない!」。大学で、後輩の今カノに膨れられ、元カレが笑ってる。涙が出そうだ。私に何が足りなかったのだろう。健気さ以外に。

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「高2の初恋相手を引きずってる」。30歳で未婚の元同級生と酒を飲む。「お互いうぶでキスもなし。だからこそ忘れられない」。慰めつつ心で思う。実は彼女と散々寝てた。相性が抜群だった。「でも好きな人とは手を繋ぐだけで幸せなの」とはにかまれた。心を奪えなかったからこそ想いが残る。俺も独身。

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久々に高校時代の男友達と酒を飲む。「もう30歳。独身主義か?」と笑われた。高2のクラスに美少女いただろ。実は1年彼女と交際してた。お互いうぶで、初恋だった。抱けなかった女って、逆に記憶に残るんだ。「引きずってるのか」。悪いかよ。「いやすげえわかる」。だろ? そういやお前も未婚だな。

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「18歳で安売りするな」。交際がパパにバレ、無理やり別れさせられた。してないよ。彼を知らないくせに、パパ嫌い。泣いて7年会話が途絶えた。今日は私の結婚式。「清くバージンロードを歩けるな」。3年前に和解した、父に頷き心で詫びる。ごめんパパ。新郎とは元サヤなんだ。実は割と安売りしてた。

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10年前、男を巡り喧嘩になった。「嫌い!」と言われ、視線すらもあわせてくれない。雪解けは3年前。また仲良く暮らせるかと喜んだのに、もう僕の許から去っていく。「泣かないで。いるでしょ、ほかに」。最後にそっと腕を組まれる。一人娘とバージンロードを歩く僕を、愛妻が微笑みながら見つめてる。

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「一浪確定」。予備校で知り合った同い年の男子がうなだれる。集中しようと言い合って、夏から一緒に勉強してきた。「……むしろそれがあだになった」。意味不明だけど私のせいなの? こっちこそ責任とってほしいんだけど。「え、何で?」。実は私も全滅なんだ。いつしか私を集中させた、君のせいで。

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