//=time() ?>
娘の彼が単車で事故り、夫と見舞いに出て行った。娘が宿った20年前、単車をやめて、と夫に泣いた。事故で脚に怪我したのだ。「捨てた」と言いつつ、夫は密かに保管している。血は争えない、か。タンデムシートは気持ちいい。病院に送るんだよね? 無事帰ってくるんだよ。久々に私も乗せてほしいから。
事故で入院――。彼からLINEで知らされる。バイク乗りとの交際を、ママには反対されていた。病院は郊外だ。パパが私の手を引き家を出る。車ないよね。いいよ、脚悪いんだし、一人でバスを乗り継ぐから。「後ろ乗れ。捨てたことにしてるから、ママには内緒な」。月極の駐輪場で、パパが古い単車に跨った。
「私もできた」。第一志望の入試後に、彼女は言った。昨夏につきあい始め、キスもハグも我慢した。歯止めがきかなくなりそうだからだ。今日の彼女は言葉少なだ。あとひと月半。手を繋ぎたい気持ちを堪えつつ、あの台詞を忘れたのかな、と不安になる。「同じ大学進んだら……その先もまとめてしようね」
第一志望の入試後に、彼と落ち合う。高3の夏から交際している。男子は恋に現を抜かしてしくじるよ、と予備校講師に脅された。「多分全て満点近い」と彼が言う。私もきっと合格点に届いてる。でも進路は別にしよう。手を近づけて繋いでくれない。彼は現を抜かさなかった。とっくに私にさめたんだよね?
「幼なじみ、イケメンだね」。新郎が新婦の私に囁いた。歓談時間、友人席で少し話した。高校時代、弾みでキスしたことは内緒にしてる。以来、気まずく距離ができ、のちの結婚相手に告られた。これで私は追いついた。お互い今と未来を大事にしよう。「お前には負けるけど、綺麗だな、彼の隣の奥さんも」
ドレス姿の幼なじみが隣で囁く。「綺麗でしょ?」。馬子にも衣裳。「惚れ直した?」。こっちの台詞だ。高校時代、弾みで触れるようなキスをした。あれが今日の挙式に繋がっている。「じゃ行くね」。キスの後、お互い気まずく距離ができた。歓談の時間が終わる。彼女が友人席から新郎の横に戻っていく。
目の見えない彼とつきあった。これまで異性に容姿ばかりをもてはやされた。老い衰えても変わらぬ好意がほしかった。「そういうピュアさに惹かれたんだ」と彼が微笑む。その言葉に少し恥じ入る思いがした。彼の澄んだ心だけで、私はこれほど惹かれただろうか。彼が知らない彼の顔は、夢のように美しい。
手が重なり、綺麗な女性に譲られる。書店で棚差しされた恋愛小説。実はうちには沢山あって、と苦笑すると「私の家にも何冊か……」。もしやと思うが、女性ははにかみ立ち去った。筆名と画風から、男性だろうと思ってた。編集者に頼んでみよう。僕の次作の打ち合わせには、表紙の絵師も招いてほしいと。
棚差しの本で指が重なり、イケメンに譲られる。この書店では残り一冊。そちらがどうぞ、と私ははにかむ。「実は家に沢山あって」と苦笑された。まさか、と私は息を飲む。筆名で恋物語だから、作者は女性と思ってた。確かめる勇気はない。次作の打ち合わせには立ち会えないかな。表紙を描く絵師として。
奇病で突然女になった。以来、男にねめまわされ、触られる。18年間、無数の女を喰い散らかした。俺はこんな苦痛を与えてきたのか。「僕はお前に欲情しない」。幼なじみが俺に囁く。変わらないのはお前だけだ。「いや、変わったからこそ変わらないんだ」。どういう意味だ? 「同じ奇病に罹ったらしい」