掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「化けて出たよ」。枕元で彼女が微笑む。半年前、闘病の末に20歳で死んだ。号泣し、僕は以来引きこもる。「……幽霊だからキスもできないけれど、大丈夫?」。構わない。また大学にも戻れそうだ。なあ、僕は君に何ができる? 「あなたの気持ちが私を蘇らせた。ただ想ってくれさえいれば、それでいい」

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東京の私大の地方入試は、市内のホテルが会場だった。一緒に上京したいと彼は言い、必死に学んで私に追いつく。デートは一度もしてくれなかった。彼と目が合い、唇を「ごめん」と動かす。寂しさに克てなかった。試験開始のベルが鳴る。別離の鐘の音のようだ。地元の国立に進学する。答案は白紙で出す。

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市内のホテルが会場だった。東京の私大の地方入試。一緒に上京しようと彼女と誓い、デートもせずに勉強してきた。好きだからこそ耐えられた。離れた席と視線が合う。俯く彼女の唇は「がんば」と動いた。大丈夫。お前に追いつき最終模試はA判定だ。試験開始のベルが鳴る。幸福な未来への号砲みたいだ。

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百万円を引き出す。「不祥事でお孫さんが大変です」と電話があった。銀行前で受け取り役の男に会う。「……これでお孫さんは助かります」。私は胸をなで下ろす。心から孫を愛してる。泣きそうな眼鏡と背広のこの男は同世代かな。久々に孫に会いたい。ところで我が家はどこだっけ。孫はどんな顔だっけ?

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交際3年。最近は彼の部屋でのデートばかりだ。私は読書、彼はPCゲーム。関係が夫婦のようになってきた。そう前向きに捉えてた。「夕飯行くか。カフェ調べておいて」。言い残し、彼がトイレに立つ。PCの検索窓に「か」と入れる。候補のトップに「彼女 別れ方」と表れた。今日のディナーは塩辛そうだ。

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待ち合わせた銀行前で息を飲む。騙し役のリーダーから、受け取ってこい、と指示された。「百万円です」。久々で、眼鏡と背広で変装してるが、気づかれないはずがない。幼い頃、散々愛された。俺は自分を激しく恥じる。「これで孫は助かりますよね?」。ああ、助かる。足抜けする。ごめん、ばあちゃん。

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元カノとよりが戻る。5年前の高校時代、初恋同士でつきあった。ともに子どもで嫉妬し合い、キスまでで別れてしまった。「もうお互いに大人だもんね。続きをしよう」。彼女は微笑み服を脱ぎ、自ら僕に重なった。快楽に身をよじり、僕は必死で言葉を飲む。まだ大人になれてない。上手だね。誰に習った?

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彼がベッドで私を見つめる。初めて2人で夜を過ごした。「束縛系って、物理なのか……」。ついまた手足を縛ってしまった。歴代彼氏に引かれたが、性癖だから直せない。束縛可だって言ってたけれど、やっぱりこれは無理だよね。「頼みがある」。ごめんほどくね。「……もう少し、きつく縛ってほしい❤」

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美人の彼女とつきあった。なぜか彼氏がいなかった。「つい束縛しちゃって引かれるの」と俯く。嫌いじゃないよ、そういうの。「本当?」。嘘じゃない。その夜、初めてお泊りする。「目を閉じて、動いちゃ嫌だよ……」。なるほど情熱的だ。って、手足縛られ動けませんが。「言ったでしょ、束縛系って❤」

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勇気がなくて、もうずっと先輩に片想い。高校でため息つくと「お茶でもしてく?」と同級生の男子に言われた。彼は優しい。何でも話せる。あのさ、好きな人に好きになってもらえないのは切ないね。「そうだなあ」。カップ片手に視線をそらした。ねえ、本当にわかってる? 「わかるよ。俺も同じだもん」

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