掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「誰だかわかる?」。高校の同級生が私に尋ねる。1年前のバレンタイン、年子の兄は手ぶらで家に帰ってきた。「先輩モテるのよ。片想いしてるから、って全部断ってた」。驚いて嫉妬で胸が痛くなる。そういう人がいたんだね。「妹も知らないんだ」。うん……。何て言ってた? 「身近だけど禁断だって」

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「今年はどんなチョコがいい?」。妹が悪戯っぽく微笑んだ。17歳で僕とは年子。「バレンタイン、去年は全滅だったもんね」。情けは無用だ。「みんなに義理チョコつくるついでだよ」。やめておけ。誤解されるぞ。男子が求めているのはたった一つの本命なんだ。「……じゃあ、お兄ちゃんの分だけつくる」

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「義理目当て? うわ最低」。17歳の幼なじみにドン引きされる。バレンタインはすぐそこだ。俺は最近、女子に愛想を振りまいてる。「数がほしけりゃ私にも優しくしなよ」と笑われた。いやいらねえ。「頼めば安いの買ってあげるよ?」。……本音に気づき妬いてくれ。お前から貰いたいのは義理じゃねえ。

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17歳の幼なじみが女子に愛想を振りまいている。「バレンタイン間近だからな」と囁いた。うわ最低。「男子にとって義理でも数が正義なんだ」。だったら私も含めなよ。あんた、ちっとも優しくない。「お前からは貰わねえ」。え、何で? 頼めば安いの買ってあげるよ? 「……だから、義理はほしくねえ」

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3月末に彼が呟く。「あと3日で新年度か」。うん? 何かやり残したことあるの? 「幼なじみと温泉旅行」。ないな。彼女作りなよ。「幼なじみとキス」。私以外をあたってね。「幼なじみと熱いハグ」。ないね。「『実は前から好きだった』と告られる」。……あのさ、それはちょっとあるかもしれない。

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振り向き彼女と視線が合う。高校の教室で、僕の席は中央前、彼女は廊下側の後方だ。担任に「HRで見つめ合わない。言いたいことは放課後に」と苦笑される。僕じゃなく、彼女が見てたの先生だ。もう卒業。彼女は勇気を出せるかな。僕は決めたよ。放課後告る。さっき廊下を歩いてた、大好きな女性教諭に。

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「そこ2人、HRで見つめ合わない」。高校の卒業間際、男性の担任にたしなめられる。私の席は廊下側の一番後ろ、振り向いた同級男子は中央前だ。赤い顔した私と彼に「お互い言いたいことは放課後に」と苦笑している。わかりました。勇気を奮って放課後言います。大好きです。つきあいたいです。先生と。

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背伸びして、お金を貯めてデートした。バイト代も就職後の給料も人並だ。あまり会えず元カノ2人と破局した。「ファミレスでも牛丼でも構わない」と3人目の彼女が笑う。「会えないよりも全然いい。好きな相手が一番のスパイスだ」。たまには高級店にも連れていく。だから一生一緒にいてくれませんか?

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「高級なイタリアンでデートしたい」。2人組の女子高生が談笑してる。私もかつて夢見てた。大人になって実現した。美味しくてお洒落だった。パスタを食べつつ私は思う。でもね、お互い背伸びは続かないんだ。「はい、ドリンクバーのお代わり」。辿り着いた3人目。婚約相手の自然な笑顔に満たされる。

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綺麗な女性に抱き締められた。宿で火災に巻き込まれたのは覚えている。病院で目覚めると、僕は記憶をなくしていた。女性のぬくもりが、微かに記憶を呼び起こす。関係を終わらせようと一泊し、僕らは最後に重なり合った。浮気か不倫の相手だろうか。涙声で彼女は囁く。「目覚めてよかった。お兄ちゃん」

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