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高2の冬を思い出す。最初を終えて彼女は泣いた。「悔やんでないよ。でも当たり前になるのは嫌なんだ」。強く抱き、そんなふうには絶対しない、と僕は誓う。あれから10年。隣の寝顔は安らかだ。2年前に結婚した。以来、数えるほどしかしていない。幸福感に包まれて、ほら約束守ったよ、と僕は微笑む。
数人が私の机を取り囲む。高校の昼休み。また等距離で笑顔を振りまいた。教室の隅にいる彼女が見える。静かに彼と話してた。「暗いよね、あのカップル」。同級生が声を潜める。曖昧に笑い返して絶望した。私と違い、仲良い父母に育てられたに違いない。たった2人の孤独を愛せる、彼女が心底羨ましい。
高校の教室で屈託なく彼女が笑う。特定の交際相手はいない。でもみんな彼女が大好きだ。私と違い、当たり前に家族の愛を浴びて育てられたに違いない。「どうしたの?」と彼が囁く。彼女が心底羨ましい。「でも僕は君が好きだよ」。私は彼に一点賭けだ。脆そうで、すくむ私は自ら壊してしまいたくなる。
「好きな人が身近にいる」。17歳の幼なじみに匂わされた。ガサツな彼女の乙女な台詞に、ヘタレの僕は聞こえないふりをする。「じゃ聞こえるようにしてあげる!」と頭をグイっと倒された。……ごめん、もう聞こえます。「そんなに怖いの? まだ始めてないじゃん」。太ももだけで陥落です、耳掃除前に。
「聞こえなかった」と17歳の幼なじみの彼が呟く。うわ、せっかく勇気を出したのに! 身近にいるよ、好きな人、と囁いた。ガサツな私はもうひけない。座ったまま、太ももをポンポン叩いてみせる。「え、何だよ?」。あんたも勇気奮いなさい。聞こえるようにしてあげるから。やる、やらない? 耳掃除。
「また失恋」。私を抱き締め彼が言う。その子、見る目がないね、と慰める。高2までの1年半、私と彼は恋人だった。自然消滅した後も、友だちとして続いてる。先日は私が振られ慰められた。気づいたよ、お互い次の恋にしくじる理由。逃げ場を残しちゃ駄目なんだ。さようなら。二度目の別れを胸で呟く。
「大人の動画に興味がある」と彼女が囁く。自室にあったDVDを再生した。22歳の僕らよりも若いのだろう。女優にはセーラー服がよく似合う。「でも男優は中年だよね? 詰襟姿に無理がある」。どうだろう、と言葉を濁す。昨日遊びに訪れて、その新作を置いてった。老け顔だけど年子なんだ。兄貴と僕は。
「少しお前と似ていない?」。彼が自室で画面を指さす。私と同じ22歳。どんなものだが興味があり、大人の動画を見せてもらった。「まあでも、女優の方が全然若いか」。曖昧に私は笑った。男優の詰襟姿は無理があるけど、女優にはセーラー服がよく似合う。そうか、こういうお仕事なんだね、お姉ちゃん。
「双子だったんだ」。高校の先輩が驚いてる。私が告った翌日に、瓜二つの妹から告られたという。菓子も玩具も姉妹で好みがよくかぶる。妹はおっとりしてるから、大抵私が手に入れた。ごめん。けど初恋も譲れない。「名前を呼ばれて誤解を解いた」と彼が言う。「君が好きなの、俺の双子の兄貴だよって」
姉と同じ先輩に恋をした。菓子も玩具も、幼い頃から好みが本当によくかぶる。姉はせっかち、私はおっとり。だから大抵、姉に奪われてきた。16歳の初恋だ。諦めたくない。勇気を奮い打ち明ける。「え、昨日告ってくれたよね?」。先輩が困惑した。また先を越されたらしい。身も心もよく似た双子の姉に。