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ベッドで重なる彼女が目を見開く。細い首を握った両手に力を籠めた。10年かけて彼女を見つけ、名乗らず焦らして夢中にさせた。「……思い出した。あなた、中学時代に私が自死寸前までいじめた男子だ」。懺悔の涙を彼女が流す。僕も泣き、それ以上首を絞められない。憎んだ仇にいつしか強く惹かれてた。
遊びのつもりが夢中になる。ナンパしてきた彼は「関係は秘密だぜ」と釘を刺し、やっとベッドに誘ってくれた。Sっ気強めな彼が、私の首に手をかける。絞めて、私も興奮する。「忘れたんだ」と囁かれた。うん何を? 彼の両手に力が籠る。「10年前の中学時代、いじめて自死寸前に追い込んだ同級男子を」
「気安く触るな。カネとるよ」。肩に回した手を払い、彼女が笑う。お互い気持ちは通じてる。でも友だち期間が長すぎて、気恥ずかしくて告れない。僕の20歳の誕生日、彼女が酔って家にやって来た。目をつむり、後ろ手を組んでいる。守銭奴め、誘ってお金むしる気かよ。「今だけ無料キャンペーン実施中」
彼は私を抱かなくなった。同棲し、婚約してからなおさらだ。交際当初、毎日重なり、言葉でも好意を伝えあった。「もう確かめなくても不安じゃない。安らげる」と彼が笑う。わかるよ。でもそれは、体や言葉の交わりと両立すると思うんだ。数十年もの結婚が、牢獄のように思われて、私は別れを決意する。
交際当初、毎日彼女と抱き合った。体や言葉で確かめないと不安だった。婚約し、激情よりも安らぎが欲しかったんだと僕は気づく。「私たち幸せな夫婦になれるかな」と同棲中の彼女が呟く。無言で微笑み、早出の彼女を見送った。なぜだろう。彼女が「行ってきます」ではなく「さようなら」と言ったのは。
制服のポケットに古い紙片が入ってた。「卒業式後、屋上で」。実家で見つけて涙ぐむ。高校時代、恋人未満でじゃれ合って、やがて疎遠になってしまった。少し前、手紙を送り、一昨年の事故死を知る。あの日メモに気づけたら、未来は変わっていたのかな。彼を招けなかった結婚式。明日、私は花嫁になる。
1年前、彼の婚約者はここで死んだ。ほかの男とビルから落ちた。猫の姿で彼に近づき、首筋を甘噛みする。「お前か?……もっと引き留めるべきだった」と涙を流す。いや彼女は成仏した。一緒に死んだ俺だけが転生したのだ。心変わりを咎められ、彼女の心は蝕まれた。恨みを込め、頸動脈を牙で掻き切る。
猫が雨に打たれていた。1年前、彼女が死んだ場所だった。お互いに、首筋に口づけ合うのが大好きだった。結婚寸前、「好きな人がいる」と突然言われ、見知らぬ男とビルの上から身を投げた。もっと強く引き留めるべきだった……。また後悔に涙ぐむ。うずくまる僕に猫が近づく。首筋をそっと甘噛みした。
高校の制服姿で私が涙を堪えてる。実家で見つけた卒業式の集合写真。この直前、翌月の結婚を担任が公表した。中央に写る先生に、淡く好意を抱いてた。見直して初めて気づく。列の外れの男子生徒が心配そうにこちらを見てる。あれから10年。明日は私の結婚式だ。心配性が治らない、彼の名前に私はなる。
力はあるのに努力が苦手。彼は高校の陸上部の同級生だ。大会の参加記録に1秒足りない。「マジか!? 2秒縮めりゃ胸触っていいって?」。うんマジだ。自分に克てる? 「絶対克つ」。片想いの彼の走りを眺めつつ、退部する。頑張れ。約束の半年過ぎたら多分触れなくなるから。昨日乳がんと診断された。