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PCのキーを叩いた彼に、抱き締められる。今や仕事もAI任せ。雑事に何も捉われない。「でも、お前以外、全てのことが味気なくて」と彼が呟く。生きがいがほしいらしく、彼は最近、子どもを求めるようになってきた。AIの進化の弊害だね。裸の彼を抱き返し、涙を堪え、隠れた背中のスイッチをオフにする。
PCのキーをそっと叩く。これでプログラミングはほぼ終わり。仕事も家事も娯楽さえも、AIがこなしてくれる。「楽でいいじゃない」と彼女が微笑む。でも全てが味気ない。こうしてお前といる時だけが、生きていると実感できる。照れた彼女を抱き締めて、ふと思う。なぜだろう。僕らは子どもを授からない。
「おせちには田作りじゃなくゴボウな」。大学の同級生が笑ってる。同じアパートの上京組。好きな男子を相手の郷里の味で落としたい、と何度か彼に料理を教わる。「それにしても、なぜ同じ地域の男ばかりに惚れるんだ?」。「ばかり」は嘘。ずっと一人に恋してる。私は東の出身で、彼は西の生まれ育ち。
アパートを出たところで鉢合わせる。大学の冬休み、彼女も帰郷しなかったんだ。鍋を両手で持っている。惚れた男の郷土料理を再現し、胃袋を掴みにいくのが得意技だ。今度は誰さ? 「内緒。少しあげるよ」と上がり込まれる。「君は西の出身だよね」。それが何かと問い返し、雑煮の丸い餅に箸をのばす。
「初詣行こう」。年末の教室で高校の同級生に誘われた。彼に向き、その肩越しに彼女を見る。彼と口喧嘩ばかりの幼なじみだ。素知らぬふりで必死に聞き耳立てている。行かないよ、と私は笑い、トイレで一人涙ぐむ。気づきなよ、彼女の想いと自分の本音に。敵わないから諦めた、私の好意はもういいから。
「無理だと年末言ったでしょ」と幼なじみに笑われる。初詣に誘おうとして、高校一の美少女に瞬殺された。仕方ねえ。三が日、境内で餅振る舞ってるから、色気より食い気のお前と行ってやるよ。「行かないよ。お餅は十分」。え、もう誰かと行ったのか!? 彼女は俯き首を振る。「家で散々、焼き餅焼いた」
同じ新人バイトの大学生が苛立ってる。新春のファミレスに、元カノが男と来ているらしい。覗いて驚く。一緒にいるの、私の彼だ。「未練がましく格好悪いな」とバイト同期が俯いた。同じだよ。浮気性で別れようと思いつつ、証拠を残さずはぐらかされる。配膳は私がやるね。現場を押さえて別れを告げる。
ファミレスで、ベルで呼ばれて息を飲む。大学の元カノが男と一緒に座ってる。新春早々僕はバイトだ。「何イライラしてるのよ?」。同じ新人バイトの女子大生に尋ねられる。あれ元カノ、と呟くと、席を眺めて「ああ確かに腹立つね」。共感されて嬉しくて、淡く彼女に好意を抱く。「相手は私の今カレだ」
「初詣も済ませたし、帰ろうか」。幼なじみが呟いた。え、今年もそんなあっさりなの? 「お前、弾みで脱がされたくないから、和装で来たと言ってただろ」。高校時代、弾みでキスし、気まずくなった。実は着付けを独学したんだ。嫌なのは「弾み」のほう。本気なら、「脱がされる」のはいいんだけれど。
「どう惚れそう?」。初詣に迎えに行くと、幼なじみが微笑んだ。実はずっと前から惚れている。高校時代、弾みで一度キスもした。なあ今年こそ素直になろうぜ。和装なの、お前も俺に惚れてるからだろ? 「それはどうかな」と笑われた。ならば何が理由だよ? 「弾みで脱がされないようにするためだよ」