# tanka

御簾から差し込む弓張月へと
ひとつ 調べを載せていきます

遠く 遠い かの場所へ
私の指で掻き鳴らす

祈りは
今宵 届かずとも

光は
今宵 消え失せようとも

星を繋いで
この音は響く

たとえ
この世は明けぬとも

遠く 遠い 貴方の許へ

【書き直し再掲】①「冬日」
絵:甲斐千鶴

1 10

凛とした冷気
のゆへに響く弦
寒さに耐えて
奏でるねいろ
絵:甲斐千鶴

3 11

ね 寝ずの跡   と
い 今は思慕せど ど
ろ 楼に咲け   け

②折々句「ねいろ」
絵:甲斐千鶴

3 7

目を瞑り
イメージを繰り返す
私は私を取り戻していく

誰も知らない
誰にも聞こえない
私だけの調べ

邪念を払い続けながら
イメージを繰り返す

誰にもわからなくても
あなたには
見えるだろうか
聞こえるだろうか

見つけて欲しくて
今日も陽の下で
イメージを繰り返す

絵:甲斐千鶴 

6 42

②折句「ねいろ」

ねむろうとするあなたに
いいおはなしを
ろうどくをきかせよう

絵:甲斐千鶴 

1 6

①「冬日」

音を奏でながら
貴方へ言の葉を紡ぐ
いつまでも
こうしていたい

冬の日は寒いけれども
貴方の言の葉は温かくて

そして
誰の肩にも平等に差し込む冬日
私の肩にも差し込む冬日

絵:甲斐千鶴 

1 9

猫ならば会いにゆくのは容易い
塀を伝って、屋根から屋根へと
あなたに会いにゆける

想いを奏でるのは容易い
弦を弾く指は迷わずに
心を伝って、次から次へと
あなたを追いかけてゆける

けれどもわたくしは
あなたを前にして
猫のように
琵琶のように
きっと素直には なれない

絵:甲斐千鶴

8 42

ねや浸す
色水のごと冬日に髪はひかりて
六欲のなか

絵:甲斐千鶴
①冬日 ②折句「ねいろ」

3 16

冬に枯れ葉が散るように

貴方の愛も舞い落ちてしまったのでしょうか

切なさを奏でましょう
この悲しみが届くように

祈りを奏でましょう
私の想いが届くように

再び暖かな日差しのもとで
二人で愛を奏でられたら

①冬日

絵:甲斐千鶴

2 7

ねえ逢いたい…でも逢えない…
愛し君への想いが揺れる
蝋燭の陽炎のように

②折句 ねいろ

絵:甲斐千鶴

1 5

或る冬日
和らぐ陽射しに
這ふ這ふと
貴殿にとどむり
弾き給へるに

寧音と呼ばれるあの日から
幾とせひそめ過ごしたか
ロマンをのぞめば人あらず

琵琶の化身と
なるべきことにて

絵:甲斐千鶴

3 14

  絵 甲斐千鶴
あなたと出逢った
あの日の日記に
わたくしは一文字も
記していない

ただ一度の
名前のない冬の日
恋は咲いて
まばたきの間に散った

想いに涙あふれ
白い息の花をおさえた
あの時の袖は
雪色の絹
涙は氷の結晶
指は想い綴る筆を忘れ
冷えた心の絃を弾く

4 34

寝待ち月如何ならんとて緑青の 音色掻き立て琵琶の月

絵:甲斐千鶴

5 19

ねすがたもみせずいつかにさりし君 蝋梅そめる琵琶のほのをに

絵:甲斐千鶴

3 13

絃をやさしくはじく度
大切な想い出を
雪の下に隠していく

ひとつ、また、ひとつ。

いつか
春になって
雪が溶けたら
美しい思い出として
愛せるように

今はまだ
琵琶の調べを子守唄に
白の深くに眠らせておく

絵:甲斐千鶴

9 64

ねえさん お稽古 お疲れ様です
いつのまにかに
ロッシーニの曲を覚えたのですか?

②折句「ねいろ」

絵:甲斐千鶴

1 23

寝間の朝陽はあなたの眼差し
愛おしき空の広さはあなたの背中
ろうそくの花を散らして数える月日

ねんねんころりと
幾つも夜を寝かしつけ
露(ろ)に耐えかねて花も泣く朝

ねえ、あなた
いまは何を思っているの
蝋梅の蕾を三つ見つけて尋ねる

絵:甲斐千鶴

2 28

御簾から差し込む弓張月へと
調べをひとつ 載せていきます

遠く離れた彼の場所へ
私の指で掻き鳴らす

祈りは
今宵も届かずとも

光は
今宵 消え失せようとも

遠く遠い 彼の場所へ

凍え冴えた夜に夜毎に放つ
私のこの音は消えはしない

「冬日」
絵:甲斐千鶴

2 17

①冬日②折句「ねいろ」

ねがわくは冬日の中を
いつまでも
朗々と鳴る琵琶になりたし

絵:甲斐千鶴

5 19

  絵 甲斐千鶴
冬の日の凍えが
それ迄の季節を
白く変えるほど
この想いは
月より透けて尚うつくしく
足蹴にされると
薄氷よりも儚く

わたくしは強くない

ふみに込めた想いを
水に流されるくらいなら
琵琶の音に綴り
とける雪のように
誰の目にも触れない
うたにいたします

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