—— 「それで,この後どうスンの」
メイは旅支度をしながらぶっきらぼうに聞いた.
「どうって言われてもなァ...」
「暇なら,ウチと来る?」
「エ?」
「ニューデリー.ちょっと遠いからさ」
「...考えてみる」

次第に小さくなる2人の会話は,夏空の下,誰が聞くこともなかった.

4 13

—— 煤混じりの雪が赤く照らされ,ニューデリー北西部の山岳地帯は砲撃音轟く戦場と化していた.

「急げ急げ!」
機動装甲に身を包んだニューデリー防衛軍兵士が死に物狂いで行軍する.背後で爆発.幾つかシグナルが途絶える.
越夜隊の旗を踏み躙りながら,兵士達は尚走り続けた.

3 17

—— 夜明け前のニューベルリン.朝焼の空は予感を携えて街を照らす.
薄暗い路地の中空は乱雑に張られたケーブルで満たされ,雑居ビルの窓の幾つかは既に仄かな明かりを孕んでいる.

電柱に目をやると,青いブルゾンを羽織ったシンカロンが1人,何をするでもなく雑踏を眺めていた.

2 19

——「…見えた」「あそこだ」「すぐだ」
インカムから声が届く.ノイズ混じりの,しかし確かな,後方からの声が.
ヒュン,ヒュンヒュンと,風切音がオーバラップする.

HUDが空中にコースラインを提示する.カーブが近い.
「まだいける」
笑いながらミアは呟き,出力を上げた!

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黄昏梟(失われた技術を回収・解析し,文明の復興を目指す科学者集団)のひとり.
主に人文学を専攻しており,終末事変から今に足るまでの人類文化の記録と保存を行っている.

肩に乗っているのは支援ドローンであり,ペンギン型だが羽ばたいて飛び,偵察や解析が可能

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黄昏梟(失われた技術を回収・解析し,文明の復興を目指す科学者集団)のひとり.
主に終末事変後に出現した新たな現象の解析を担当しており,いわゆる「魔術」と呼ばれる異常現象を解き明かそうとしている.

フィールドワークにも勤しんでおり,あまりラボに帰らない.

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旅人.
背負ったギターはよく手入れされており,行く先々で演奏をしては路銀を稼いでいるようだ.旅の目的は不明.

現在はニューベルリン近郊に滞在しており,文明の痕跡調査隊のベースキャンプに入り浸っている.

好きなメニューはバイオ豚のソーセージ.

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—— メテオラはここで賭けに出た.推進剤を飛行ユニットに注入し,限界負荷直前まで回転数と速度を上げる.
加速度と遠心力に軋むボディをなんとか制御し,メテオラはついにその機影を捉えた.

そして,彼女は振り向いた.
悠々とチェックポイントを踏みながら.
「遅かったね」

7 47

 

「お下がりください マスター」
———— バトラー型シンカロン(Think alone, 汎用人型アンドロイド)

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シンカロン(Think alone, 汎用人型アンドロイド)

富裕層向けハイエンドタイプ
バトラー型シンカロン
:::
有事の際に所有者を守るため,バトラー型の多くは「潜在的脅威に対する先制自衛権の実行力」を有していた.
法規制を掻い潜り,その”実行力”は拡大の一途を辿った.

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シンカロン(Think alone, 汎用人型アンドロイド)
メンテナンス中

10 64

 

終末劇場グランギニョル 劇団員

8 62


「徹底的自由平等民主主義貫徹戦線」

移動要塞都市ニューロンドンを追跡し,中に立て篭もる「時代錯誤の既得権益占有者」による圧政破壊の為に活動している,ブリテン島を拠点とする戦闘集団.

元は終末事変時に取り残された米軍残党部隊だったが,時を経てミームは歪み伝えられた

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バトラー型シンカロン(Think alone, 汎用人型アンドロイド)

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バトラー型シンカロン

彼らの主業務は家事全般から主人の補佐まで様々であり,それぞれの特化型もまた開発されていた.

そしてそのすべてに,「有事の際のやむを得ない正当防衛の為の戦闘用アルゴリズム」が搭載されていた.

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