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「博奕打ち 流れ者」鶴田浩二 これはよかった。藤純子が出ているのもたいへん結構。若山富三郎と死地に向かうストイックな姿、まだ熱気を帯びた惨劇のあとに黒い花を咲かせる男たちの沈黙。勝っても負けても誰から認めてもらうでもない戦いであった。悲しみの時間をやり過ごす。しんと静かに・・・。
「明治侠客伝三代目襲名・ふたたび」「うちを連れて逃げておくれやす」初栄の懇願に「勘弁してくれ、あの夜、お前の所に泊ったばかりにわいは親分の死に目にあえんかったんや」義理の道を選び、高ぶる感情を抑えた鶴田は泣かせる。二人の内に秘めた熱気が堪らなく印象に残る恋愛映画の傑作である。
バーテン小沢昭一も真っ青「甘い汗」爆発編:
すみ江(木村俊恵)との壮絶な乱闘。「オッパイのたるんできたような女は嫌いだってよ」「たるんでるか、おいッ、何処がたるんどる」高校生を娘に持つ梅子(京マチ子)は上半身ブラのみで、この啖呵。暗い室内には脂汗の浮いた彼女の豊満な胸元が映し出された。
龍彦大兄「毒薬の手帳」再UP:何と何と魅惑に満ちた題名であろう。碩学の毒薬の蘊蓄が披露される。家庭をしわくちゃに丸めた浮気女の夫殺し。富裕層の財産掠奪。貴族階級も例外ではない毒茸、毒人参。正しく古代ローマ、暗殺の立て役者である。因みにメディチ家の家紋をご存じか、一説では丸薬である。
「勝手にしやがれ」再UP ジャン=ポール・ベルモンドがかっこよく憎めない。可愛い。ジーン・セバーグはCOOL。「俺は最低だ」呟きながら息絶えるミッシェル・ポワカール。「最低って何のこと?」と無表情に問いかけるパトリシア。ロマンチストな男とリアリストな女、すれ違う。若さとはこういうものだ。
「赤い天使」日中戦争当時、手足を悉く切断していく軍医岡部(芦田)の手術がモノクロに反し赤い血の匂い、色を鮮明にイメージさせる。そして従軍看護婦、西さくら(若尾)との恋。他の部下が必死に陣営を死守している中、二人は倒錯プレイ。ようやるわの二人である。ここでも男たちは彼女に屈服するのだ。
「日本で一番悪い奴ら」大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて、なんとなく刑事になった諸星〈綾野剛〉の狂喜と波乱に満ちた世界が北海道警の組織的汚職を軸に徹底的に描かれる。主人公の単純な思考、そして破滅に向かう姿が時に強烈である。白石監督の中では「孤狼の血」「凶悪」よりこちらを推す。
「生きる」三十年、無遅刻無欠席の市民課長「渡辺勘治」定年間際に胃癌であると確信する。保身にまみれ一体何の人生であったか、死と向かい合っての絶望、少し遊だりもするが全然らしくない。思い立った 公園建設になりふり構わない奔走が始まる。志村喬の口ずさむ「ゴンドラの唄」がしみ込んでくる。
「わたしを深く埋めて」都会派ミステリーの体裁である。弁護士、そして探偵役となるのが色男の田宮二郎。「わたしって、悪い女ねッ!」もう許してもらえるのを分かっていて仰る若尾さまの色香に完全に翻弄されまくりの状態。最後は「抱いてッ!」と迫られてしまう。予想通りのダメ亭主は川崎敬三が好演。
アンドレセン賛美:神が天使の手を借りながら密かに造り上げた生きる彫刻。彼方の世界からやってきた幻の少年。ちょっといないなッ。『この少年の素晴らしい美しさにアシェンバッハは啞然とした。蒼白く優雅に静かな面持ちは、蜂蜜色の髪の毛にとりかこまれ、・・・』トーマス・マン(ベニスに死す)より