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(そうやって苦しみ続ける限り、楓はぼくの記憶を手離すことができないから) (それだけが、ぼくらを繋いでくれるから)
明日香は重い体を動かして、顔を楓の方へ向ける。こちらを真っ直ぐに見つめる瞳に、自分の姿が映っているのが見えた。
「なっ、ん……だよ、それ。教師が言われたい言葉ランキング1位じゃん。他のセンセーにも言ってみ? イチコロよ、イチコロ。成績上がんじゃない?」 茶化すように言いながら、袖で笑みを抑えきれない口元を隠した。
「ワタシは、みんなと仲良くしたい。友達でいたい。関わり合いたい。だから、そのために、信じさせてほしかった。安心させてほしかった」
「しん、くん……」 香歩が顔を上げた。乱れた髪の隙間から覗く視線と、眞の視線が交差する。
「いつもこれでいい」 「ダメだよ、いっくんすぐ怪我するんだから」 「レディファースト的なアレが あンだろ」 「たいしてファーストする気もなくないか?」 「ない」
「嘘だと思うなら箱の中を確かめてみなよ。一度も引かれていないはずの君のくじに、血がべったり付いてるはずだからさ!」
『……橘椿希さん、だっけ』 『……ふふ、君は殺さないでおこうかなあ』
じわりと背中を汗が伝う。痺れるように、指先の感覚が失われていくのを感じていた。
「全部、受け入れてくれて、そばに…いてくれて、ありがとう……ぜんぶ、ずっと…ありがとう」