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「ヤメてェー!!」
サラは必死に叫んだ。傷だらけの腕は、形振り構わず草木を掻き分けて来たことを物語る。
「お前はあの時の…」
「お願いです。
魔女様を傷つけないで…
お願いします…」
「サラ…」
「ねぇ、魔女様。そろそろお昼にしませんか?」
「お前はいつもお腹を空かせているね。その小さい体のどこにそんなに入るんだい!」
満面の笑みを浮かべながらサラはパンとミルクを用意しだした。凡そ(おうよそ)誰にも見せたことのない優しい笑みを浮かべて魔女はゆっくりと椅子へ向かった。
「ちょっと背中をお見せ。」
サラの背に魔女が手を翳す。(かざす)
〈アパレシウム…〉
魔女の呪文に反応するようにサラの背中に封印が現れた。
(魔力の封印!
何故封印する必要がある?
この娘はいったい何者なんだ!?)
サラは口の中いっぱいにパンを頬張り、頬を赤らめて美味しそうに噛み締めた。
「ほら、ミルクも。」
ミルクカップを少女に渡して魔女はハッとした。
なぜ私はこんなことを…
あぁ、調子が狂う…
好きにするといい。ただしここからは出ないほうがいい。出れば森の獣たちに襲われるだろう。ここの結界は獣も絶対に入れない。
ありがとうございます!
それで…あのー…
まだなにかあるのかい?
安心したらお腹が空いてしまって…
はぁぁ…しかたない娘だね。
そこのパンでも食べな。
今日もまたひとり、この世界に迷い込んだ者がいた。エメラルドのような瞳。翡翠のような髪。小さく華奢な体。唐突に現れた異様な世界に戸惑いは隠せない。少女の大きな耳は危険を感じて震え始める。
魔女はこの世で一番自分が賢いと自惚れている。この世界に迷い込んだ者たちを惑わしては魔法陣に誘い込み、カボチャに変貌させた。成れの果ての姿を見て狂喜し、自分はこの世の何者よりも知に長けた神だと豪語する。どんなに知識があろうとも、神が彼女のような存在でないことは誰にでも分かること。
彼はこの世界で”畏怖”と呼ぶべき象徴だった。3本の枝が絡まり合う柄の先に括られた有明の月と紛う刃。彼がそれを持つだけで、死神とは本当はあのような姿なのだと錯覚する。そして、前を照らす光は必要ないとばかりに彼はカボチャを被る。