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「ああ、番頭どの。あるじがおられますぞ!
しかも、どうやらお美和どのも
お見つけになられたようでござる。
お――い、あるじどの!」
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「あやしの旅館へようこそ!」
の挿絵(手描きイラスト)です。
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「――あら、いややわ。
おじょうさまとは知らず、とんだ粗相を。
あたくしは、お美和ともうすいやしい女でございます」
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「あたしのおとうさんのことも知っているの?」
「そうさ。おぬしの父親は
寝てるあいだに、わしのしっぽを
チョウチョむすびにするようなやつだった」
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「……あなた、お美和さんがどこにいるか知っているの?」
「もちろん知っておる。
しかし、屋根を突きやぶられたわしが
それを、おぬしに教えてやると思うかね?」
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落ちた小屋の奥にいたのは
「えっ、なに?…………ウシ?」
「――牛だと?失敬な童(わっぱ)だな」
人面の牛だった。
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「だいじょうぶでござるか?あるじどの!」
クワクは「口から吐きだした」糸で
のりこを電信柱の上に引き上げた!
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「『お美和』でございますか?……はい、それはまだ当館に在籍しております」
(おみわさん?だれそれ?)
のりこには、番頭の電話が謎だった。
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「その袢纏ならば、どんなよごれ仕事を
していただいてもかまいません。
いくらでも換えはありますからね」
「う~ん」
少女あるじは不満げに自分の服装を見た。
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のりこが、ブランコにゆられながらうなだれていると
「――どうしました?マドモアゼル?」
明るい声をかけてきたのは、昨夜むかえた伊達男客だ。
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のりこは
犬の口の奥に顔を見た。
「あっ!番頭……」
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