//=time() ?>
イタコさんが手紙を書いてゐた。東北の妹さん達へ送るらしい
ふと、足許に皺くちやの便箋が幾枚。みな「お姉ちゃんは元氣です」まで書いて、止まつてゐた
――その一文すら、家族に嘘はつきたくないのだらう
わたしは、無い男らしさを胸に、そつと決心をかため、音ひとつ立てぬやう廊下をあとにした
ラヂオの流行り唄に合せて、イタコさんが踊つてゐた
鏡越しに見えてゐるが、こちらが気付ゐてゐるとは思つてゐないやうで、くちをちよいと動かして唄ふ眞似などしてゐる
まるで何も知らぬ少女のやうに可愛らしかつた
――わたしではこうはなるまい。今度、レコードでも買つてやらうと思つてゐる
驚いたことに彼女は、自分で買って來た西瓜を、食べたことが無いといふのです
確かに、價段を考へれば、ボイロの身には縁遠い果物なのでせう
「これが夏のあぢはひだよ」
そう云って一口齧らせたら、初めて年ごろの娘の顏を見せたのでした
髪飾りが揺れ、まるで、そこに一輪、狐薊でも咲いたかのやうな