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…オレさまを幽玄の“お嫁さん”にしてくれないかな」
知らなかった。おれの記憶と全く違う文神様の姿に呆然としてしまう。
…そして全身に紅い紅い系が何重にも巻き付けられて揺れていた。
顔を上げて歩いてみる。周りの景色が沢山見えた。池の水面に碧(みどり)になった木々が映り、その中を淡い橙、白色や赤色の鱗をちらちらと輝かせながら鯉達が泳いでいく。柔らかい風が頬を撫で、目隠しの裾を揺らす。その端から神の横顔が見えた。細っそりとした白い顔に夏の影が掛かって揺れている。
………あのひとが……。
…勇様はきっと“自分が悪い”と思ってる。私を助けたせいで…彼は自責の念に襲われている。優しい勇様にそんな感情を抱かせてしまった自分が憎い。
「ああ、私と共に戦うに相応しい者は強く気高い者だ。覇頭、お前は綺麗だ。お前は私が今まで見てきた中で一番強く美しいよ。私と共に戦ってくれるな?」
…そこの彼女は勇虜次のお嫁さんか?」
「俺は何があっても雪様、貴方を護りぬくと誓っています。貴方の生まれがどうであれ、この戦いがどうであれ、貴方は俺にとって唯一のお方です。ただ…貴方の盾となり、剣となり、最期まで戦います」
相手が何を伝えたいのか分からずに漱は喋喋喃喃の顔を見上げた。喋喋喃喃の顔は人形みたいに動かない。