//=time() ?>
宿場町を歩む老婆の背中はもはや一種の憧憬
吊るし雛は妖しく光り古い日本人形の影
黒猫が足元を纏わりついてくる
何もかもが過去と懐古
郷愁注意、過去に囚われます
街角の看板の注意書き
ここに来てからたましゐは抜け落ちた
歯が抜ける様に骨が折れる様に
何かがふっと奪われた
そう、囚われたのだ
宿場町は風を操り人を癒す
謎多き影法師が風の舞い
闇と仏もどじょう掬いを踊って
夏はなかなか終わらない
夢法師あの曲がり角で夢が渦巻いている
裏の川で鯉をなますにしてからというもの
背中の鱗の跡がなかなか取れないと
嘆いている衆生が嵐の夜に
本物の鯉になって仕舞う
夏は呼んでいる
涅槃の花が静かに咲いている
あの絵葉書の中で笑うあなたは夏色で
夢ばかり見ていました
過去はあなたの心に残る花
懐古の風が何処からか吹いてきて
清水はこんこんと湧き出てくる
通りには夏の熱風が今だ何処かで
懐かしい想い出闇のような記憶
あの家のなかで光るたましゐに
罪はないのだから
少女は大人になる夢を見る
赤い潮も丸みを帯びる体も
なんだか侘しい寂しい
永遠に子供で居たかった
久遠の社の下で毎日枯れ葉の布団を作って
梅雨の水田で泥団子を作って
校庭で独りぼっちで鉄棒する少女は
誰か知らない人の腕の中で
赤信号は点滅している
黒猫は横切る
これではいけないと
それでも
透き通った息を吐く春の夕べ
妖しは多分遠い過去よりやってきた目覚めの使者
あの神社では只櫻があのお寺では只櫻が
闇の群れに抱かれ刻は戻らないと
過去だけが笑って微笑むだろう
薬指の柔らかい所に蝶は止まって雨水を飲む
その腕にはもう抱かれる事はないだろうと
願えば願うだけ此方を振り返る影
ぬばたまの夜
春の水路に蛇ひとり
くゆりくゆりと煙を吐く旅人も
夕闇の妖しさに影となり
夕べの夢はよい夢でしたか
大和撫子は咲きましたか
雨に濡れて口のきけない少女は
きりりと赤いあやとりを握ったまま
街灯の下で櫻を恨んだまま
とても遠い町の話
とても長い刻のゆめ
山茶花は咲きましたか