虚島の巫女と言霊の巫女①

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「ひ~るこ ひるこ
いずこへ往(ゆ)く~?♪
母(かか)さま 焼~けた海の果て~♪

ひ~るこひるこ
いずこへ往く~?♪
父(とと)さま 哭~いた黄泉の坂~♪

ひ~るこひるこ
いずこへ往く~?♪
固き弟達の間~♪・・

3 11




「ひるこに来るな言うんはよー判らん..
やけどな!
勝負するなら次は絶対に絶ーっ対に負けへんで!
ゆい!」

「ふふ。楽しみにしてる。」

「くぬぬ最後まですましよって!」

「じゃ..」

「絶対負けへんで!

ひるこー!
勝負やー!!」

6 10

「レッツ・パアァージ!!」
うしみちゃーんは
大関こゆいー♬

3 5




「・・・」

「・・・」

「..そう...自分自身がひるこさまに重なるのね..
やっぱり貴女みたいな良い子をヒルコ島に来させるわけには、いかないね。」

「え..?」

「勝負はナシ、でそろそろお別れね。
迎えも来たみたいだし。」

「迎え..?」

7 16




「..無理しないで。
あと小一時間は足腰立たない筈よ。
そんな技だから。」

「うっさいわ!!
取り消せ!
今言うたんを取り消せ!!

どんなに強うても自分を平気で
『いらない子』なんて言う奴に
ウチは負けられへん!

負けられへんのや!!」

6 20




「.....」

「?」

「..な..や.....」

「.....どうしたの?」

「..ざ....る..なや..」

「ついなちゃん?」

「.....ふざけるなや!!

あんなに強いのに!
ウチより強いのに!
自分が『いらない子』やなんて!!

ふざけるなやー!!!」

3 16




「帰れなく..!?」

「..そんな方相氏も何人もいたの..

貴女の活躍は知ってる。
人に必要とされる貴女が
捨てられたひるこに来てはいけない。
そこに住む私達みたいな
『必要ない者』
になってはいけない。」

「必要ない..いらない..子!?」

5 15




「日本開闢の刻よりさ迷う
ひるこ島はね...

同じくこの日の本をさすらいさ迷う魂が最後に辿りつく..
そんな所なの。」

「??
それでウチが来たらあかんゆうんは...?」

「帰れなくなるからよ。
帰る所のある者は..ひるこに来てはいけない。」

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「...元気...出た?」

「だいたいウチはこれから!!
て..へ?」

「気をつけて、ついなちゃん。
貴女の魂は失ったモノのせいで
ヒルコに近付いてしまった。

貴女は...
私の故郷ひるこ島に来ては
いけない。」

「!??..それってどういう..」

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「...子守り...て
何やこれーー!?」

「あー...霊力抜けてヘタった巻き髪が地面擦って痛みそうだったから......おんぶ紐?」

「人の髪で何しとんねーーん!?」

「..にしても『ない』のね、男の子みたい。」

「何が無いんや、何がーー!?」

5 19




「・・―るこ いずこへ往く~♪」

「・う・・」

「葦芽(あしかび)萌~ゆる中つ國(くに)~♪」

「ひる・・こ・・?」

「!
あら・・ついなちゃん・・
目が覚めた?」

「その唄・・」

「唄?
ああ・・

これは私の故郷
ひるこの子守り唄よ。」

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―ひーるこひるこいずこへ往く♪
固き弟たちのあいだ~♪

「!?
...この...巫女はん...!」

―ひーるこひるこいずこへ往く♪
照る妹こもりし岩戸~♪

「そうや...ウチはこの巫女を知っとる!
こいつは...

―ひーるこひ....

ひるこゆい!!」

4 14




―ひーるこひるこ いずこへ往く~♪
母(かか)さま 焼~けた海の果て~♪

「あれは...草の舟?
乗っとるんは...巫女はんと、赤ちゃん?」

―ひーるこひるこ いずこへ往く~♪
父(とと)さま哭~いた黄泉の坂~♪

「歌っとるんは...巫女さん..?」

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―...こ...いず...く...―

「!?」

―ひ...こ...る...こへ...く―

「...何や...これは...?」

―...るこ...る...いずこ....く~♪―

「これは...唄...?
誰か歌うとんねんか...?」

―ひ~るこひるこ♪いずこへ往(ゆ)く~♪―

「!?
ひるこ!??」

3 10





「方相閃・斬(ざん)!!!!!」

「水土(みづはに)重ね打ち!!!
萎え凝り(なえごり)なさい!!」

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「そうや!行くで!!
ひるこ!!」

「来なさい!ついなちゃん!」

「...厄難災禍...悪疫即祓(はらい)...」

「...よろづもの(万物)のはじまり(根源)はみづ(水)にてあり...」

「邪気病魔...凶鬼即滅...!」

「みづは死にて土を生きる...!」

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「うるさいで!
『攻撃は最大の防御』や!
お前に勝つには・・お前に勝つには、これしかないんや!!」

「!?・・守りを捨てた、矛の諸手(もろて)持ち・・
そう・・単純だけど、今度は自棄でなく本当の『捨て身』・・ね。
・・勝つための!」

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「・・・」

「!?

いいの?
方相氏の手足の一つも同然の盾を捨てて?」

「・・
・・何や知らへんけど分かるんや・・
お前に、
うちの守りは通用せん。
受けよう思ても

一撃でやられる。」

「・・まるで何度も経験したような口振りね・・」

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