紀州路の出てはまた入る
 トンネルの
  合間を縫うて秋時雨降る

9 44

晩秋の野末を染めて
落ちる陽に
釣瓶も猫も影長々と

5 56

仕上がりを色で告げよと
 神様が
  柿に教えてやり給ひしか

6 40

残された傘を片手に見送れば
    高速バスは秋霖に消ゆ

6 49

発電所へ渡る吊り橋
 赤く染む
  秋の夕陽の村景色かな

8 43

谷向こうに終日絶えぬ
 ヘリの音
  鉄塔立てる工事続けり

4 39

秋昼や時を刻める神様の
  時計の音がコツコツコツと・・

7 32

天使達
集いて山の
稜線を
 塗り直したり
 秋澄む今朝は

5 49

ぶるぶると身を震わせて露払う
      庭の帰りの猫の朝かな

7 56

杉林の中より仰ぐ天の川
 田舎暮らしも十年が過ぎ

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秋の朝ドアスコープに
 三毛見えて
   そは五十年前の猫なり

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手花火が
ポトリと落ちて
その夏の
  記憶はそこで
  終りたる件

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枝豆を食うときくらい
 忘れろや
  塩分は日に何グラムの論

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鬼畜米英
迎えてみれば
鬼畜も人の
子だったね

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一人焚くのは
門火じゃないよ
コロナワクチン
早くして

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片時も厳しき顔を
 崩さざる
  鷹の生涯苦しからずや

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開け放つ
座敷を通る
昼の風
 何やら秋を
ささやき始む

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一瞬の躊躇いありて
 気を引いて
  後動き出す回り灯籠

と言ってもこれは動き出すはじめだけの話ですが・・

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日傘くるくる
あの人くるか
人は来ないで
猫が来る

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