「そうだね、正直ルブーラムの文化とかそういうの、心の底から下らない、って思っているよ」
それはカータにとって、意外な答えだった
ルブーラム皇国の要職にあるカルディアナ自身が、自分の国の文化を「下らない」と言ってのけたのだ

1巻 第三章 力という名の正義 3節

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こうして長年温め続けてきた『カドルステイト物語』を完結させた私は、そのスピンオフとして『外伝 情熱の氷』や『カルディアナ戦記』を書きました
しかし『カルディアナ戦記』3巻まで出したところで世はコロナ禍に突入。仕事の関係で収入が途絶え、執筆が途中で頓挫してしまいました

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マジードはカータに問い掛ける
「カータくん、もしかして図面が読めるの?」
そう、男性訓練所の少年達は皆、図面はおろか数字や文字を読めないのである
「けっ! 下らねぇ。そんなの俺達には必要ない!」
アズハルは吐き捨てるように言った

1巻 第三章 力という名の正義 2節

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フードの隙間から僅かに見える銀の髪と白い肌、そして小さく動く赤い唇を、カータは不思議な気持ちで見つめていた
「キミはどうして、そんなところに閉じ込められているんだい?」
(この人、誰だろう? すごく綺麗な人だけど)

1巻 第二章 月の中で見た夢 5節

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カルディアナは驚かされていた。それはアイシャがこのような辺鄙な場所に居る事に対しての驚きではない
凄まじい俊敏性
まるで抜け殻のように虚ろな目をしていた少女が見せる、その尋常ならざる素早さに、カルディアナは心底驚かされていたのだ

1巻 第二章 月の中で見た夢 2節

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「君、アイシャと言ったかな。君は僕が怖くないのかい?」
カルディアナは女達から向けられている侮蔑の視線を気にもとめず、少女に聞いた
「うぅ」
しかし少女は意味のある言葉を話せない
「君は不思議だね。なぜ君の中は何も見えないんだい?」

1巻 第一章 断罪の執行者 4節

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そこに、白銀の騎馬が現れた
「愚かだね。もう君達には、逃げ道なんて残されていないよ」
白馬に乗った銀髪の男は、まるで独り言のようにそう呟くと、腰に挿していた細身の曲剣をゆっくり引き抜く。それは月光に照らされて青白い輝きを放った

1巻 第一章 断罪の執行者 2節

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「娘! そんなところで何をしている」
「お前、まさか皇民か?」
彼女のもとに兵士達が集まってくると、少女に向かって矢継ぎ早に質問を浴びせ掛け始めた
「……うぅ……う」
しかし少女は、フラフラと何処とも知れない方向に向かって歩き始める

1巻 第一章 断罪の執行者 1節

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「人間よ、姿形に惑わされてはならぬ。この姿はあくまで我の仮の姿に過ぎない」
「で、では、あなた様は……もしや?」
「我は女神リース! シスター・シーリーンは、その代弁者である!」
なんと、シーリーンは自らが、女神リースそのものであると宣言した

1巻 プロローグ

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「行くってどこに?」
「そうだな……」
カルディアナは上を見上げると、暗い夜空と黎明の明かりが半々になった空の中間、北を指差しながら宣言する
「天翔る大河の、向こう側へ!」
カータは目を輝かせながら大きく頷いた
「うん、行こう!」

3巻 第九章 星降る眷属の宴 5節

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もうすっかり顔も思い出せなくなっていたその人物こそ、彼の義理の母親、初代女皇パトリシアだったのである
これ以上の舞台が他にあるだろうか
父は、最高の舞台を自分に用意してくれたのだ
カルディアナは歓喜に打ち震え、涙を流していた

3巻 第九章 星降る眷属の宴 4節

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少女は天使のような悪魔の前に跪き、祈りを捧げている
朦朧とした意識の中で、エルドラナはその少女がやろうとしている行為を強く肯定した
この世界は争いが絶えず、悪意に満ちていた。このような醜い世界など、女神に見放されて然るべきなのだ

3巻 第九章 星降る眷属の宴 3節

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シーリーンは深菫色の瞳をエルドラナに向けながら宣言する
「誰の目から見ても正しい正義など存在しない。故に、本当に正しいかどうかは、この際関係ない。重要なのは、より多くの人間に、自分こそが正しいと信じ込ませる事なのだ!」

3巻 第九章 星降る眷属の宴 3節

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「おや、このような場所に居たのだな、シェヘラザード。いいえ、アイシャと言ったか? それとも、断罪の執行者と呼ぶべきか?」
三人の女達は、ゆっくりと降下していく環の形状をした回廊で対峙し、それぞれ皮肉のような軽口を叩き合っている

3巻 第九章 星降る眷属の宴 2節

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「なんでだ、なんでこんな事になるんだ。俺はただ、自分が生まれ育ったこの大好きな故郷で、普通に生きていきたいだけなのに!」
「侵略者どもめ、帰れ、出て行け! よくも! よくも俺の大好きな場所を! 俺の故郷を! よくも!」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 9節

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「カルディアナ司令官、レイラ様が、レイラ様が!」
悲痛な叫び声を上げながら伝えてくるカリムとサアド
カルディアナにも浮足立った皇軍の混乱が手に取るように分かった
「全員、直ちに旧市街に撤収せよ、第一城郭の門を閉じるのだ!」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 5節

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ようやく第二波の揺れが収まり始める
最早レイラには揺れが止まっているのか、それとも未だ小刻みに揺れているのか、その区別も付かなくなっていた
「子供達の救出を急げ」
レイラは短くそう言うと、近くに出来た地割れに向かって走り出す

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 4節

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皇軍を勝利へと導いたカルディアナ。だが今宵の出撃は彼にとっても、実は初陣だったのだ。レイラは大声でその司令官を称えた
「聞け、祖国を守るその司令官の名を! 彼の名はカルディアナ! カルディアナ在る限り、皇軍の勝利は永遠だ!」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 2節

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「結果は手段を正当化する。其方は妾の言う通りに動けば良い!」
「女皇陛下がお望みになっても、わたしはお兄様にはなれません」
嘘は所詮、嘘なのだ
真実と嘘が入れ替わる事など有り得ない
「なぜならこれが、わたしの真実の姿なのです」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 1節

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フィルヤールの最期の言葉。それはライバルでもあるレイラへの、コンプレックスの告白であった
「うおおお!」
レイラは目の前で息を引き取ったフィルヤールを見届けた瞬間、雄叫びのような声を上げる
「おのれ許さぬ、許さぬぞ、地母神軍の侵略者共め!」

3巻 第七章 弔い合戦 7節

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