ようやく第二波の揺れが収まり始める
最早レイラには揺れが止まっているのか、それとも未だ小刻みに揺れているのか、その区別も付かなくなっていた
「子供達の救出を急げ」
レイラは短くそう言うと、近くに出来た地割れに向かって走り出す

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 4節

0 1

皇軍を勝利へと導いたカルディアナ。だが今宵の出撃は彼にとっても、実は初陣だったのだ。レイラは大声でその司令官を称えた
「聞け、祖国を守るその司令官の名を! 彼の名はカルディアナ! カルディアナ在る限り、皇軍の勝利は永遠だ!」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 2節

0 2

「結果は手段を正当化する。其方は妾の言う通りに動けば良い!」
「女皇陛下がお望みになっても、わたしはお兄様にはなれません」
嘘は所詮、嘘なのだ
真実と嘘が入れ替わる事など有り得ない
「なぜならこれが、わたしの真実の姿なのです」

3巻 第八章 ころがる肉塊 うごめく獣 1節

1 2

フィルヤールの最期の言葉。それはライバルでもあるレイラへの、コンプレックスの告白であった
「うおおお!」
レイラは目の前で息を引き取ったフィルヤールを見届けた瞬間、雄叫びのような声を上げる
「おのれ許さぬ、許さぬぞ、地母神軍の侵略者共め!」

3巻 第七章 弔い合戦 7節

0 5

シーリーンの脅威と成りうるもの
それはルブーラムの女皇に代々継承されている悪魔契約の秘術のみ。エルドラナによると、それは既に失われて久しいという。煩わしい魔女シェヘラザードも居なくなった今、シーリーンの行く手を遮るものなど何もないのである

3巻 第七章 弔い合戦 6節

1 3


失われた故郷を求めて世界を旅する冒険物語
『カドルステイト物語』全7巻

膝を折りながらも立ち向かう戦士の生き様
『外伝 情熱の氷』

戦乱の時代を生き抜こうとする人々の姿を描く
『カルディアナ戦記』全3巻

利他的行動が巡り巡って還ってくる優しい物語
『レミアの翼』

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ジャファールはアレイスに向かって檄を飛ばした
「死んでしまっては何にもならん! いいか? 戦場で最も優先すべきことは唯一つ、最後まで生き延びることよ! そしてその為に敵を殺すのだ! 殺さなければ、自分が殺されてしまう。よく覚えておくんだな!」

3巻 第七章 弔い合戦 5節

0 1

女皇は美しい白銀の鱗に手を伸ばすと、最後の別れを惜しむかのようにギュッと彼を抱き締めた
「ほら、もう行きなよ」
女皇は気丈に振る舞おうと口を開く
「…………」
しかし彼女が言おうとした最後の言葉は、聞き取れる音として発せられることは無かった

3巻 第七章 弔い合戦 4節

0 2

リース教会の司祭長であるシーリーンは、自らを女神リースの降臨した姿であると言って憚らない。それは偶像崇拝を禁止するルブーラムとは正反対の慣わしである。レグナムオン共和国の制度は、その全てにおいて、ルブーラム皇国のそれを否定するものだった

3巻 第七章 弔い合戦 2節

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地母神軍の軍楽を掻き消す程の大音量。誰もがその轟きを耳にした瞬間、まるで硬直したように戦いの手を止めていた
耳をつんざく激しい音の正体は、数々の神話に登場し語り継がれている幻の存在、地上最強の生物と謳われるドラゴンから発せられた咆哮だった

3巻 第七章 弔い合戦 1節

0 5

なまりの強い地方でその国の言葉を覚えた者は、同じなまりを自然に身に付けてしまうという。ルーナリアもその例に漏れず、カルディアナの喋り方でカスタリア語を覚えてしまったようだ

2巻 第四章 天翔る大河を越えて 1節

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フィルヤールは突撃を中断すると、カルディアナに問い詰める。皇軍の司令官は高い声質ではあるが、今のは明らかに違和感があった。男装していたルーナリアは、それを気付かれないよう心掛けてきたが、反響した声は誰が聞いてもそれと分かる女の声だった

2巻 第六章 審判の時 5節

2 3

《あなたはその魔女に騙されているの!》
どんなに屈強な肉体を持つ戦士でも、心を自由自在に操ることは難しい。一度恐怖に囚われてしまうと、その屈強な肉体など、脆い硝子で出来た壺のようなもの。戦う事すらままならなくなってしまうのだ

2巻 第六章 審判の時 3節

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フィルヤールにしてみれば、異人の自由と平等を謳う反体制運動などは、努力の足らない人間達の言い逃れにしか聞こえない。本当の自由と平等とやらを手にしたいのであれば、彼女自身がそうしてきたように、努力を積み重ねて成功を掴み取れば良いだけなのだ

2巻 第六章 審判の時 1節

1 1

カルディアナは今までに味わった事のない幸福感に満たされていた。まるで自分が普通の人間に生まれ変わったかのような錯覚に陥ってくる
「あれ、それは女の人の踊りだよ?」
「そうだったね。つい間違えてしまったよ」
彼女は心の中で冷や汗をかいていた

2巻 第五章 千年祭 6節

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「ねぇおじさん、この卵は何でこんなに大きいの?」
すると店主はニヤリと笑ってみせながらその大きなゆで卵に包丁を入れた
「二黄卵って知ってるか? 人間にも双子がいるように、鶏が産み落とす卵にも双子の卵がある。それが二黄卵なんだ」

2巻 第五章 千年祭 6節

1 2

「やぁ、待たせたねカータ。その格好とても可愛いよ」
「ねぇカルディアナさん。なんで祭りの見回りをするのに、こんな格好しなきゃいけないの? ボク、ちょっと恥ずかしいよ」
カータは自分の不満をありのまま打ち明ける
「慣れればどうって事ないさ」

2巻 第五章 千年祭 5節

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「君には、僕を護る専属の側近になって欲しいんだ」
カータは復唱するように呟く
「カルディアナさんの、専属の側近?」
「なにしろ君は、僕よりも強いんだ。自分よりも強い男に護られるなんて、そんな心強い事は無いだろう?」

2巻 第五章 千年祭 4節

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「俺はもっと豊かな生活をしたい。この国のルールに乗っかっている以上、本当の豊かさなんて得られない。ルールの外側に立たないとダメなんだ」
ナザックは自らの決意を口にする。それは現状の社会に対する、強い反骨精神の表れだった

2巻 第五章 千年祭 2節

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「信念を貫くのは素晴らしい事だと思います。でも多くの人はそれを成し遂げる事なく一生を終えてしまうのが普通。正しいことも、良いことも、他の誰かがやってくれれば、それで良いのではないでしょうか?」
「それでも、ボクがやらなきゃ」

2巻 第一章 天翔る大河を越えて 7節

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