(錠前の告白は凄絶なものだった。生贄として育てられていた秤、アリウスを牛耳るマダム・ベアトリーチェ。秤を生贄にする儀式は、明日にでも行われるという。──今夜は長い夜になりそうだ)

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(百合園が幻視した赤い肌の魔女、そしてアリウスの最奥に位置する聖堂。一方、怪しげなメールに呼び出された私の目の前に立ち塞がったのは、錠前サオリだった)

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(時間は少し遡る。錠前たちは、同胞にすら追われていた。秤が自らアリウスに降っても、ベアトリーチェなる者の手は休まらず、彼女たちはあえなく銃火に倒れようとしていた)

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『私も錠前のDJ、見たいしな。早瀬もそうだろ?』
「ええ。──サオリさん。アズサちゃんに出来たことなら、あなたにもきっとできるはずです」
「アズサにできたこと……そうか。彼女も、今の私と同じ気持ちだったのだな」

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『あいよ。戒野、頭の上を借りるぞ。早瀬は戒野の直掩。錠前、お前が攻撃の主体だ。槌永は錠前を火力支援。秤はヒーリングで二人のサポート! 七囚人に、今時のアリウス勢の力を見せてやれ!』

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『どんな真髄だよ!』
「ですが、敵防御系、心拍数とも向上しています。あの呼吸には、実際に敵の能力を向上させる効果があるようです」
『単身戦闘に特化した七囚人か……』

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『第四の七囚人……!』
「つくづく七囚人に縁があるんですね、先生は」
『好きで宴を作ってるんじゃないけどな。早瀬、敵の防御系は?』
「特殊装甲と推定。サオリさんなら優位に立てるはずです!」

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「先生、あれは!」
『あの体格なら重量級、いや、男子とやっても勝てる。──スケバン勢力の黒幕は、最初からこいつが本命だったんだ』
「戦力の逐次投入なんて下策だと思っていましたが……そういうことだったんですね」

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「早瀬さんもドローン先生も、遅かったね?」
「すみません。この辺りはマップデータが古くって」
『空白地帯だからなあ』
(それにしても先生)
(ああ。どうも只事じゃなさそうだな。スケバンの動きも統制が取れていた)

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「ぼったくり屋台の次は八百長試合ですか……」
『錠前のおかげで無事に粉砕できたがな。順調に夏の思い出ができてて何よりだ』
「それはそうですけど、さっきの変に統制の取れたスケバン、なんだったんでしょう」
『大丈夫だと思うよ? 錠前だって秤たちだっているんだ』

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「サオリさんを顎で使うパワハラDJは成敗しましたけど、スケバンがここに来てるのは気になりますね」
『まーな。お祭りの間は大人しくしてもらいたいもんだ』
「そもそもスケバンは個の集まりのはず……黒幕がいるのでしょうか?」

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「で、どうするんですか先生。アツコちゃんは確かに可愛いし、サオリさんも美人ですけど」
『顔のチェックはしっかりしてんのな、早瀬。……仕方ないだろ、どっちもこなすに決まってる。お祭りが終わるまでな』
「風邪引いててもそういうところは変わらないんですね、先生」

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(アウトロービーチ。3つの自治区にまたがって存在する空白地帯は、それゆえに私やヘルメット団のような追われる身にとっての楽園になった。──アツコたちはどうしているだろうか。いざとなれば先生を頼ってシャーレに降れ、と言ってはあるのだが)

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(かくて、流星雨の日は来た。本部の屋上に陣取った私たちに、輝く星の雨が降る。天見の笑顔をそばで見ながら、私はうとうとと船を漕ぐ。その間に天見が何か言ったような気がしたんだが、なんだったのだろう。そして、天見となぜかいた早瀬は、どうして微妙な顔をしたのだろう)

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「事故。ああ、事故ね。まったくもって美しい言葉だ代表殿。悲しい事故はいつでも起こるものさ。こんなふうにな──早瀬!」
『連邦捜査部シャーレ副官、早瀬ユウカと申します。貴船に積載された無届け貨物について、少々お時間、いただけますか?』

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(奇妙な異臭、不審な住民。私たちは夜の村を調べていた。だがこの異臭、どうも『スズちゃん』で嗅いだ匂いに似ている。……どうも嫌な予感がしてきた)

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(この村では、皆が何かを恐れている。『深きもの』と呼ばれる何かを。まるでコズミック・ホラーだ。まさか本当に、名状しがたい何かが潜んでいるとでもいうのか?)

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(私たちは観光客を装って漁村を訪れた。静かな、と言うよりは寂れた漁村。エビ漁で潤う、という割には、まるで火が消えたようだ)

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「やれやれ。夏に遭難とはスリリングな土地柄だな」
「こんなに吹雪くなんて珍しいですね」
「だがどうする、この状況」
「密室に女が二人。ならばすることは決まっています──オールナイトチェリノちゃんトークです!」
「オールナイト……なんだって?」

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(再開発計画は嘘のように撤回され、子ウサギタウンに平穏が戻ってきた。──だが。事態を操る黒幕は未だ見えず……私たちの知らないところで、さらなる尖兵を用意していたのだ)

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