(そもそも。世間は夏休みだというのに教師にそれはない。その事実に辟易はしていたのだ。だからこそ、珍しく元気のない姫木と、珍しく連絡が取れない秋泉は、些事を早瀬に任せて外出する格好の口実だった)

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「ノーマル剣先も文字で来てくれたし、あとは誰をどう育成するか……」
「はーっはっはっはぁ! ならば今時代は地熱! すなわち温泉!」
「鬼怒川貴様⁉︎ どこから入って来た⁉︎」
「……私だ。貴女に縁ある者と聞いて、つい」
「なになに爆発オチ? 爆破スイッチ押していい?

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(かくして、砂狼は見事幻の貝を仕留めた。荒波をかき分け、熟練の海女にも負けない大漁を勝ち取ったのだ。──ただし。味に特筆すべきものはなく、なんというか、普通の貝だった)

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(無法者の楽園には似つかわしくない、美しいハマナスの茂み。思わず迷い込んだそこで、アリウスの華は優しく笑う。苛烈な逃避行の果てに、こんな潤いがあったっていい。私はファインダーの中の大輪を、メモリカードに焼き付けた)

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(残業で待ち合わせに遅れたのは私の責任だし、聖園の口車に乗った私もいささか軽率だったのだろう。だからと言って、門限間際の自室に閉じ込めてしまうのはやりすぎだ。本部に戻ってからうっかり長文で叱ってしまったのだが、不味かっただろうか)

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(保護観察中の聖園にとって、ボランティア活動も赦免の条件だ。暑い暑いと唸っているので、見かねて助け舟を出す。早瀬あたりは甘いと思うかもしれないが、偶然通りがかったということにしてもらおう)

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(久田とその友達がシャーレに転がり込んできた。なんでも正式な部活になりたいそうなのだが、認可手続きに難渋しているらしい。そしてちょうどよくシャーレを訪れる陰陽部の桑上。うまく間を取りもてればいいが)

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(グラフィティアートはストリートの華。しかし教師としては、人様の建物にスプレーを噴くのを看過するわけにはいかない。小塗の生きがいを社会と調和させるために折衷案を出してみたが、さて、うまく行くだろうか)

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(風邪を引いて寝込んでいる時に、不思議な夢を見た。どこともしれない島を私と浦和が歩く夢だ。なぜか都合よく生えているフルーツ、変に大人しいくせに下江たちは聞きとしてからかう浦和。まさか、予知夢じゃないだろうな)

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「すごいな、漆黒の。ああいや、砂狼、でいいのか?」
「どっちでも構わない。ねえさまは……ねえさまじゃ、ないんだよね」
「お前さんの姉様じゃないけど、代わりの呼び名がある。──先生だ」
「──御形、先生。旧姓で呼ぶのは変な感じ」

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(そういえば、錠前がギャラの未払いにうるさい理由は、やけに腰の低いショットガン使いが関わっているらしい。どうもある特定のタンクの顔が重い浮かぶのだが……きっと触れない方がいいことなのだろう)

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「朝からお疲れ、仲正。……剣先がこんなところでいい空気吸ってるってなると、結構ガチ目の武力侵攻だな? 大丈夫か?」
「一応うちの分校なんで。校内問題だからETO的にセーフだし、シャーレの先生が絡むなら、連邦生徒会的にも申し訳立ちますし」

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「とっととこの縁起悪い場所から帰るぞ。どうせ朝になったから、正義実現委員会だのなんだのがおっとり刀で押し寄せるんだ。めんどくさいことになる前に、奇跡を一つ、見せてやる。──聞こえてるな早瀬! アレをやるぞ!」

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(こうして、迷子の騎士はプリンセスを取り戻した。あとは私の出る幕じゃない。追われる身になってしまうとはいえ、こいつらはその中で迷いながら未来を選んでいくのだろう。それでいいのだと思う)

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(聖園ミカは答えを得た。赦しにたどり着いた。それは私の預かり知らないところで、全く手のかからないいい子で、そのくせ心配ばっかりかけやがって、とも思うのだが。今回の勝因があるとしたら、こいつはその筆頭だろう、と思うのだった)

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(雲霞のように湧き出るユスティナの亡霊。どう言うわけかガリガリと体力を削られるメカ聖女。混乱しつつも、私たちは血路を開く)

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「……」
「……」
「言うな。恥ずかしい台詞だとは思ってる。けどな、自分の過ちで延々苦しみ続けるより、他の選択肢があるなら、白州だって桐藤だって喜ぶだろ。自分の道なんだ、広い方がいいに決まってる。そのためなら、この小さな手をいくらでも貸すよ」

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「こうまで豪快に倒れるもんかね、古い建物だからって……」
「倒してるんだろうね。それが証拠にリーダーとはぐれた」
「ぴいい! 外の世界でいう地雷女のフユコさんですね? 狙った相手と必ず差し違えて空中戦が苦手だとか!」
「どんな地雷女だよ⁉︎ 」

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「聖園……全て奪われたから奪っていいなんて理屈、あっていいはずないだろう。自責でよほど惨めになるだけだって、お前もわかっているはずだろう。許すことができなくても、どこかで止めなきゃいけないんだ。そんな不幸になるだけの無限ループなんて」

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「どんなダンジョンだよ」
「こんなのだよ。誰も全貌は把握していない……もしかしたらマダムはしてるのかもね」
「だったら尚更時間はかけられないな。すまんがこき使うぞ」

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