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『若様の武運長久を祈願するのが、あたくしの役目ですからね』
そう理屈を付けて、氷垂はできるだけ夫の傍かにいようとする。
源三郎の「武運長久」の為に役立つならば、自ら山を、里を、戦場を走り回る。
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自分自身はまだネット小説大賞の公式サイトを見に行けていないのですが、拙作が一次選考を通過しているとの情報を頂戴致しました。
有難いことにございます、有難いことにございます。
「お主も砥石へ行くか?」
氷垂は口惜しそうな不満そうな顔を作った。
「心引かれますが、若様が砥石のお城に入ったと殿様に伝える所までが、今日のあたくしのお仕事です」
源三郎も口惜しそうな不満そうな顔をした。
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「あたくしが若様の足手まといになるとでも仰いますので?」
頬を膨らませた氷垂へ、源三郎は、
「逆だ。私がお前の足に追いつかない」
真面目顔で言ったものだ。
背後で源二郎が肩を小刻みに震えさせていた。
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訓練が行き届いていない兵士達は正しく隊列を組むことができない。
経験の少ない兵士達は戦場で自分がやるべきことが判らない。
彼らは自分のすべきことも戻るべき部隊も判らぬまま、自分の周囲の動くあとを追いかけて動く。
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杉原四郎兵衛は逃げた。
「オタクラこくでねぇ! なんで俺が山猿に頭を下げなけりゃなんねぇンだ!」
吠ほえて、杉原四郎兵衛は塩田平の中を逃げた。
つまり、真田から逃げると言いながら真田の勢力内に残り続けた、ということでもある。
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皆、疲れていた。腹を減らしていた。
先導の者に、
「あとどれほど歩けば良いのか?」
と問う気力も湧かないぐらいに心身が萎えている。
何も考えられないから、何も考えずに、ただ前を行く者の尻の後に付き従って、山道を這はい上る。
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「さても、そちら様はさぞ名のある将なりとお見受けいたします。願わくば、この若輩者に一槍お手解きを頂きたし!」
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人間は役割を与えられると、それらしく振る舞うようになる。
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高砂や
この浦舟に 帆を上げて
この浦舟に 帆を上げて
月もろともに 出潮の
波の淡路の島影や
遠く鳴尾の沖過ぎて
はやすみのえに 着きにけり
はやすみのえに 着きにけり
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「お前は女にしておくのが惜しいな。男に生まれておれば、私などよりもずっと良い武士になったに違いない」
「御免被ります。もしあたくしが男に生まれておりましたなら、こうして若様のお側にいることができません」
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上田城下でジャイアントキリングが行われようとする頃、千曲川対岸の山城に十数名の男達が籠もっていた。
小勢の真田を見限って多勢の徳川に付くと言うだけ言って、実際には何も行動を起こさない
と決めた彼らの運命は?
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「お前はまだ日が浅いから知らなんだろうが」
源三郎は指で大蔵に近くへ呼んだ。
彼が主人の近くに寄ると、源三郎は大蔵の耳の近くまで口を寄せて囁いた。
「あの女衆はな、私の奥方様なのだよ。つまり、私はあれの尻の下の敷物なのだ」
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小馬鹿にされて怒らないのは武士ではない。罵る相手を切り伏せないのは男ではない。
徳川軍は突き進んだ。城門の前へ殺到した。
誰かが明確な突撃命令を下したのではない。だのに、徳川方全員が一つ方向へ駆けだした。
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信州上田で真田軍と徳川軍が衝突。
真田源三郎が支城へ詰めようとする頃、廃城へ向かう一団があった。
「徳川に身方する」と吹聴しながら戦闘から逃げるという作戦を立てた地侍・杉原四郎兵衛一行の運命は?
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上田城下で真田と徳川が衝突。
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真田昌幸が占拠する信州上田城へ向かって徳川軍が攻め寄せる。真田源三郎は、わずかな伏兵部隊を率いて支城へ詰めた。
その頃、川を越えた先の山城に登る一団があった。徳川に身方する、と吹聴しながら――。
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