それだけこの恋は特別だったんです
わたしの世界を塗り替えた溺れるような初恋は

誰かにナイフを突き立て、切り裂き
そして……血を流して欲しいものだったんです 

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だから救けられたんです

過去になるしか無いのなら
それを捨て去っても惜しくはない

それは傷痕を残す際にも同じ事でした 

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コルデー
「ーーさようなら、愛されたあなた
 どうか、後悔を抱えたまま、お幸せに」 

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コルデー
「だから……ずっと覚えていてください
 シャルロット・コルデーというありふれた女の事を」 

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コルデー
「本当に、本当に幸せだったのです
 信じられないかもしれませんが、後悔など一切なく」
コルデー
「ただ少しだけ悲しい痛みが、過ぎ去って、
 空っぽになっていく今が、寂しくて、愛おしいのです」 

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コルデー
「ずっとずっと、苦しんでほしい
 ずっとずっと、癒えないでほしい」
コルデー
「ずっとずっと、忘れないでほしい
 こんな酷いことばかり浮かんでしまいますが」 

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コルデー
「わたしはあの人の事を忘れてしまうのだから
 その分あの人には覚えていて貰わないと困るのです」
コルデー
「ーーだからわたしはあの人を傷つけます」
コルデー
「わたしが抱いている感情は、
 わたしだけが理解している唯一のものだと解らせます」 

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コルデー
「ーーこんなわたしでも一生忘れられない
 唯一の傷跡としてあの人の心に刻みつけられる」 

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コルデー
「こんなわたしが救けられた人
 こんなわたしを救けてくれた人」
コルデー
「こんなわたしに救けを求めてくれた人
 そんな人に出会うのははじめてで」
コルデー
「目的がなかったわたしに立ち上がる理由をくれて、そして
 恋を教えてくれた」 

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精一杯、顔をあげる
すると『あなた』がそこにいた

ああ、ほんとうに、心底…… 

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ーーありがとうございます、オデュッセウスさま

本当ならばすぐにわたしも消えていたはずなのに
今意識が残っているのは彼のお陰……というのは夢見過ぎだが
この時間こそが、わたしが本当に欲しかったものなのだ 

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わたしが彼を討ち取るという盤狂わせ
わたしが彼を殺したという事実

マスターを殺した感覚は未だ抜けず
まるで戒めるようにナイフを握りしめていた 

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コルデー
「ほんとうに……ほんとうに……
ありがとう、ございます……!」 

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コルデー
「ーーありがとうございます、オデュッセウスさま」
コルデー
「こんなわたしを召喚してくれて」
コルデー
「こんなわたしに、意味を……与えようと……してくれて……」

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その事を唯一証明できるのは
シャルロット・コルデーが流した涙だけなのだ 

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だからこそ今、この場に居る誰もが
それこそ死を覚悟していたはずのオデュッセウス本人でさえ除外したのだ

ーー彼女が暗殺をするなんてことを、まさか計画する筈がない、と

そんな瞬間はやって来ないものだと
彼らの認識に刷り込まれてしまっていたのだ 

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この場に居たすべてが彼女を見ていた
幾度となく立ち上がるその姿
幾度となく言葉を紡ぎあげる顔
その生き様を、そして
慈愛に満ちた、安らかな表情を 

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鉄仮面
「恋を……知ったからであったか」
コルデー
「……ええ!わたしの世界を様変わりにしてしまうような」

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鉄仮面
「……まさか、逆に意味を与えられるとはな」

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コルデー
「そんな『冒険(オデュッセイ)』を経験したあなただからこそ」
コルデー
「ーーあなたもまた『オデュッセウス』だったのですよ」

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