いよいよ暗い季節、冬の始まりです。木々がいっせいに葉を落とし、ヒヨドリたちが霜の大公の先触れとして甲高い声で鳴き始めます。そして冬至頃には、零落した神霊とも伝えられる「ワイルドハント」が木枯らしと共に疾走し、人々は彼らの時間「夜」が来る前に家路へと急ぐのです。

33 82



彼らはどんな言葉を話すのでしょう。アイルランドでは本来の母語であるアイルランド語を話していると言いますし、別のお話では古風な言葉遣いであるとも。またコウモリの鳴き声のようなチィチィキィキィ聞こえるとか。逆に人の言葉をすべて理解しているようです。

35 130



境目、境界線は妖精たちの領域。季節の変わり目もまた彼らが立ち現れる時間です。木々の葉が色づくのも、また萎れ散るのも、冬の女神に連なる妖精女王が、銀の杖で幹を叩いて行くからだとか。老婆の姿をしていますが、その実、白鹿を連れた美女だとも。

46 132



妖精たちはどうやらお喋り好きのようです。特に群れをなすタイプは。彼らのお喋りには秘密がたくさん隠されていることが多く、未来のことはもちろん、彼らとの取引を有利に進められる事柄なども含まれています。当然、盗み聞きがバレたら大変ですけれども。

27 87



痛風やリュウマチ、そして手足の痺れなど。中には今でもハッキリとした理由が分からない症状があります。それを往時の人たちは妖精の仕業としてきました。例えばおべんちゃらばかり使い裏で陰口を言う人や、それこそ彼らの生活を侵害した人などに矢を投げかけ呪うのです。

23 70



鉱山には小人が住むという話は多く伝わっています。中でもノッカーというコツコツと鎚で鉱床を叩いて知らせる妖精はつとに有名で、その音を聞くと幸運に恵まれるなどと言います。が、彼らの取り分をくすねようとするとリュウマチになって下半身が動かなくなるというお話も。

30 94



季節の変わり目などに、ふと一陣の寒風や、それこそ季節外れの暖かい風が吹くことがあります。それはもしかすると彼らの乗った風かも知れません。「妖精の風・シーグィー」と呼ばれる風で、当たると体調を崩す事もあります。姿を隠した彼らそのものだという話も。

64 184


波の下にあると言われている妖精郷ですが、民話や伝承では、城や街が湖や海に沈んでしまう。けれどそこは以前と変わらず人(人魚や水霊になっている場合も)が住んでいて、よく晴れた凪の日には、水底都市が見えるというものがあります。

34 166



基本的に妖精たちの名前は、こちら側から一方的に付けたものが多いようです。
例えば赤い帽子をかぶっている邪妖精はレッドキャップと呼ぶのは有名なところ。鉱山で金槌をコツコツと叩いて鉱脈を知らせてくれる小人たちはその音からノッカーと呼ばれています。

32 109



妖精に攫われてしまったという話は妖精譚の定番ですが、中には連れ去られそうになる途中の事を伝える珍しい話も。野原で娘が行方知れずになった父親は真夜中まで探します。しかし見つけられず諦めかけていたところ、街から戻る荷車に娘が。

21 105



妖精譚や幽霊譚などで、雄鶏が夜明けを告げる声で、事なきを得た、というお話は多いものです。それは実際に夜が明けるから、という理由もありますが、雄鶏の時を告げる声は「いと高き所には栄光、神にあれ」(ルカによる福音書)と鳴いているからだそうです。

32 138



勧められた食事を断るというのは、礼儀的には微妙ですが、こと妖精譚ではそれが最良です。あるお話では、砦から出て来た女性から朝食を勧められた2人がいました。1人は断り、1人は食べてしまいました。もちろん食べた方は命を落とすのですが……。

19 84



彼らに攫われた人を取り返すには、ハロウィンや満月の夜など、砦から馬に乗って出てくる時に、馬から引きずり下ろす、というのが定番です。しかし中には妖精たちのハーリングなどの試合に加勢し、勝てば帰して貰えるという半ば身代金?のような場合も。

25 80



彼らを視ることの出来る目。それは血統であったり特殊な力が必要とされていますが、それを得る方法も伝わっています。例えば自分の髪を何本か抜き、繋いで腰に3周(諸説有り)させます。そして又覗きの要領で後ろを見る。そこに3度葬列が通れば目に魔力が宿るとか。お試しあれ?

22 85



嘘が嫌いな彼ら。何故そうなのかは分かりませんが、価値観も生きている時間軸も違うのですから、お互いに信用するのは『約束事』だけというのは当然かもしれません。特に取り繕う嘘やいい加減さは嫌いなようで、彼らに嘘をついた男が一晩経たずして呪殺された話があります。

31 117



彼らが嫌うものは数多ありますが、そのに「自慢」「不遜」があります。新しい物を自慢していたら嫌がらせをされたなどは当たり前で、中には、表面上取り繕っていても内心……というのも見抜かれてしまうようです。恐らくそれは彼らの最も嫌う「嘘」に繋がるからなのでしょう。

37 141



彼らの飲み物として有名なのは妖精杯から無限に湧き上がるぶどう酒や蜂蜜酒ですが、それらは霊薬のようなものであり、単純に渇きを癒やすという意味以上の効果があります。それとは違い、ハニーサックルの蜜などは、彼らのお好みで、よく集めに来たり飲みに来たりするそうです。

48 147



Happy Lúnasa !!!
8月最初の日。最初の収穫期がはじまりました。まだまだ暑い盛り(いやこれからか?)ですが、実りの時期へと季節は動き始めました。桃や葡萄などの季節の果物、そしてクロワッサンを食べてお祝いをするといいようです。

38 122



サンザシの白い花は彼ら好み。同じようにリンゴもそうだとか。特に、挿し木したリンゴの木は彼らの領分と伝えられています。白くて香りが良く、毒性のない花がお好みのようですが、草花になるとブルーベルやジギタリスなど、毒性のある花が好きと伝えられているので不思議です。

29 122



彼らの姿が垣間見られる日はハロウィンなど古の暦と密接に関係しているのは良く知られています。同時に時間も大事で、正午や明け方、夕暮れ時などがそうですが、どうやら大事なのは「影が消える時」の様です。正午は影が1番短くなり、夕暮れなどは影が溶ける……。

48 143