ーーなぜあなたは、それでもいたいとおもうのですか 

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アヴェンジャーは言っていた
ここに集ったのは誰もが罪深き復讐者であると
それは彼女も例外ではないのだろう

しかし、それを見たとき
わたしはこう思ってしまったのだ 

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ーー笑っていた

殺したくない、という言葉とは裏腹に
彼女の口の端は確かに釣り上がっていたのだ

背を向けていたのに口元は覗かれて
それをわたしは見てしまったのだ 

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わたしは気付いてしまった
彼女がお腹を抑えている事を
彼女の眼に螺旋が宿っていた事を、そして

「ーー凶れ」
「……なっ」

刹那

腕が捻れ弾け飛ぶ
直後、赤黒い華が咲いた 

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「女ァアアアアアア!」
獣欲に満ちた猛り声が彼女に近づく

大きな身体、太い腕
いともたやすく女を壊せるもの

あんなものに襲われたら、あっという間に底へと叩き込まれるだろう。しかし 

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「あれは煉獄の悪魔だ。どうしたキャスター!呆気にとられているぞ!それとも幻滅したか?……これはおまえの憧れさえも例外ではないぞ!」
「……いいや、幻滅はしない。少し勢いに気圧されただけだ!」
「それでいい、無垢なおまえにさえ無情にも現実は襲いかかるのだから!」 

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「どうやら女としては見られていないらしい」
「別に。女を奪うものとしてなら認識は間違っていない」
「そうか、おまえは女が好きか」
「好きだった、かもしれない、もうぜんぶわからない」

そう、すべては過去形だ 

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「……助けてくれた人がいた。助けてくれた人達がいた。身命を賭してまで、心配してくれる誰かがいた」 

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「微かで、か細くて、声にも出来ない。助けた所で、何の利益もない、むしろ誰かに迷惑だってかかるかもしれない。なのに」 

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「アーチャーのお陰でメルセデスさんも落ち着いたようだ。こういうのはやはり同性の方が支えになるのだろうか」
「……」
「……ごめん。今回も助けたのは俺達の我儘だもんな。でも」 

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「女。貴様、名は在るのか」
「……いいえ、分からないのです。なぜ此処にいるのかも、此処がどこかも。それに、ああ名前、自分の名前も思い出せない。私、ええと、なにか大切なものを……探し……求めて……」
「……」
「写し身だと感じたか」
「いいえ別に。彼女はわたしじゃない」 

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「どちらでもいいんだな?」
「……そう言いましたけど、それが」
「うん。なら助けよう。二人は……」
「私は構いませんよ。アヴェンジャーさんの方はどうしますか?最も、マスターを無効票にしてしまうと多数決で決まりなんですが」
「……チッ」

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「女の人ですね」
「常ならばおまえはこの女を助けるはずだ。しかし今は」
「……どうでもいいです。わたしの死に何も関係ないんですから」
「ははは、だろうな!最早おまえは他者に価値を見出す心も残されていないのだからな!」

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「ここにいる三人はあなたが『いつかのどこか』……特異点以外の場所で出会う事になったサーヴァントだ。俺は夢から、アーチャーはこの場所に近い所から、そしてアヴェンジャーは……」
「語る必要はない……そろそろだ」

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「彼女は夢に対して影響力を持っている。揺りかごをイメージして貰うといいだろうか。それがこの監獄塔からあなたを守っていたし」
「それを悪用した外法をおまえは知っている。異聞帯となりかけたあの世界の事だ。その起点に用いられる程にあの女は異常だったのさ」

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「……結論からいうと、ここは過去にゲーティアがあなたに仕向けた不発弾のようなものだ。不発に終わった原因はつまり……清姫さんのおかげだ」

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「ならば行きましょう。そこに『正しい死』があるのなら」
「だから征くのか」
「ええ、身勝手ですが」
「構わん。その時にはオレ達の誰かがおまえを殺してやろう」
「私は嫌ですよ」
「俺もだ。勝手に決めないでくれアヴェンジャー」 

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「間際に炎で焦がれても、氷の中に閉ざされても、いかなる傷を負ったところで『それを宿した魂』となるだけだ。仮に魂が死ぬとすればそれは死……それも人ならざるものへと変わり果てる死だ」
「何か言いたげですね、アヴェンジャーさん」
「気にするな、悪意はない」 

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