「ワシは死を乗り越えた…!」

紳士的な白い帽子が落ちないように片手で押さえながら、黒猫はひょいと逆立ちした

「見ろ、人間。この反転境地を!」

黒猫は酔っぱらっていた
私はヨロヨロするその小さい体を静かに眺めていた
その黒い毛なみに、1mmも綻びはなかった


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運命に決まってる
今までの独りの時間は、2人の出会いの為にあったのだったと思えるよ

卒業しても、ずっと一緒にいられるよね
この桜がいつも満開なように

絵:カシオペア様(@pixiv_id_837276)



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私はそれをほとんど聴いていなかった
音漏れする程、バカデカい音量だったのに

昨日の君の言葉、ずっとリピートしてた

「これで最後にしよう」

その言葉から逃げるように
昨日からずっと音もない音を聴いているんだ



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何時間考えただろう
上京して3年。会えない寂しさよりも、「寂しい」と伝えられない方が辛い

ワンルームに積まれた本。その上に、まるで居場所を探し当てた遊牧民のように置かれた時計は深夜1時を指す
机のスタンドライトは私の夢を映すように、私だけを照らしていた


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