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夢の中の私はその塊と同化する。そして彼が一番忌み嫌うモノで
なく、彼が一番大切にしていたモノの姿を形作る。それは彼の、
キバクロウの最愛の妻、オブナの姿。夢の中の人間の女が
オブナとなる。驚愕するキバクロウ。
「結界がたどり着いた先は月。弾ける結界から解き放たれたキバクロウ。大きく開いた月の顎。どの時空と繋がっているのかはわかりません。なぜなら月の口に入って帰って来た者は一人もいなかったからです」
「導師の作った結界に囚われるキバクロウ。長い時間が過ぎていく中、キバクロウは初めて悔いました。己の中に大切にしまってあった<愛する気持ち>を自分自身が汚してしまったこと。それを恨みに変えてしまったことを」
「その現象に気がついた者がいました。あらゆる時空の嘆きと刹那を見ることができる導師、阿風導師。導師は気づいていました。破壊を繰り返すキバクロウを転生させたのは自分の兄阿雲導師である事を」
佇むキバクロウ。キバクロウに近づく光の蝶。それは寿命を全うした妄蟲の念。その念が光となりキバクロウに寄り添います。彼の<会いたい者>のカタチとなって。包み込む白い念。穏やかな顔のキバクロウ。優しい時間が流れました。※絵本創作の為の物語のバリエーション・作・三月巴。(続く)
降り立ったのはキバクロウ。妄蟲の鳴き声はキバクロウに女の叫び声に聞こえたようです。襲いかかるゼンマイグモを両断。命が救われた妄蟲がキバクロウの念を探ります。その念はどこまでも深い悲しみの念でした。しかし、そんな念でも妄蟲にとっては生きる為に大事な養分なのです。
年月が過ぎ去る。キバクロウはまだ都市にいた。激しさを増す戦火。散っていく沢山の魂。憐憫と救済の想いをカタチにする都市。慰像観音(いぞうかんのん)。その眼差しは遠く隣国の果てまで届き慈愛の念を発する。
キバクロウが街の景観と融合する。独京天を詠む阿風導師。戦乱の世を放浪する孤高の導師。一陣の風が宝具を揺らす。リンという音色。落ちていく想天女(そうてんにょ)。
逢魔時。かつて結界に守護された都市があった。赤犬と牙鴉が融合したキメラ像。その像は平和の証。ハネヤスメにやってくるキバクロウ。彼を歓迎する無数の鴉。
巨岩の中。灼熱の中を飛翔するキバクロウ。亡者の群がキバクロウを襲う。アカムシに喰われた妻の名を呼ぶキバクロウ。白鳥の翼。その翼に触れる為に長い時間をかけて飛んできたのだ。そしてその手が白い翼に触れる。
別の時代の別の世界。寝仏の上のキバクロウは空を見上げた。天空に不気味に輝く紅い光。その光に向かって飛んでいく一羽の白鳥(しらとり)。その鳥にオブナの影を見たキバクロウは天向かって飛翔する。
「かつてあの御神木が樹竜だった頃。
キバクロウ様とオブナ様はこの場所で婚礼を上げた。沢山の精霊たちの祝福。夫婦の儀。お二人の姿はそれはそれは神々しいものだったという。しかしその至福を砕き壊すモノが現れた」
「雨の日に想願鏡を覗くと<想う人>の姿が見える。
キバクロウ様はきっとオブナ様の姿を見ていたはずさ。
オブナ様?オブナ様はキバクロウ様の大切な奥方だよ。
白い翼のそりゃとてもお綺麗な妖人様だ」
「色々な世界へ行って集めた天女の像。それに囲まれてキバクロウ様が羽を休める所。それがあの御神木なのさ。そしてキバクロウ様は雨の日に必ず想願鏡をみつめる。とても大切な時間だ」