『はっきり伝えておく、これは片桐グループ総帥として、宗家の長としての決定事項だ。迷惑をかけずに従うんだな、迷惑をこれ以上かけないうちに、な』

ハハと鼻で笑った後、陽子の兄は立ち去ってしまった。絶望する妹を残しながら。




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『喚くな蓮っ葉め、お前に兄と呼ばれる気はない』
「うっ……」

冷たくあしらわれる。兄妹とはいえど日本有数の大財閥である片桐グループを有する片桐家は大一族でもあり、互いの縁は薄かった。

『遊びは終わりだ、家へ戻れ』




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そして。合同レッスンが終わり自分の住まう部屋へ陽子が向かっていたところで、

『これは珍しい、久しぶりだ陽子』

陽子の兄、片桐宗正が、マンションの廊下に立っていたのだ。

「兄さん!」

不意の対面に、陽子は叫んだ。だが。




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