少年はずっと想像していたのだ。陽の光に溢れる丘で、思いのまま駆け回る自分の姿と、その時に感じる気持ちのいい風を。カータは自由に世界を駆け巡り、旅をするのが好きだった。それなのに今の自分は、一人で歩くことさえ出来ないのだ

1巻 第二章 陽が昇らない峡谷 3節

0 2

負けるかもしれない
そう思うからこそ、物語は面白い
常に勝てるなら何の苦労もしない
リスクが高いから戦いを回避する
まだ力が足りずに勝てない事もある
次の勝利を信じて逃げ出す時もある
逃走は、リスク以上のリターンを得る為の第一歩

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背丈は自分と同じか、それよりも僅かに小さいだろうか。張りのある力強い声とは対照的に、その体つきはほっそりとして華奢だった。茜色の髪はひどい癖っ毛で、ところどころ不規則に跳ねていたが、それが却って彼女を愛らしく見せた

1巻 第二章 陽が昇らない峡谷 1節

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「かーっ、マーヤお姉ちゃんか。やっぱり来てたのかい」
その時、恰幅のいい男性の老人が少女に声を掛けてきた
「しーっ。あなたも雑芥が目的なら、静かにして」
「いいだろう、今は協力しよう。でもわしはライバルだからな? 雑芥は先に頂くぞ」

1巻 第一章 落陽と囚われの月 2節

2 7

「かーっ、マーヤお姉ちゃんか。やっぱり来てたのかい」
その時、恰幅のいい男性の老人が少女に声を掛けてきた
「しーっ。あなたも雑芥が目的なら、静かにして」
「いいだろう、今は協力しよう。でもわしはライバルだからな? 雑芥は先に頂くぞ」

1巻 第一章 落陽と囚われの月 2節

1 7

現れたのは、いかにも魔導師を思わせる人物だった。白いフードを深くかぶり、ゆったりとしたローブに身を包んでいるが、暗くてその表情までは分からない。発せられた声も中性的で、性別さえも不明だった
「これは酷い。要治療……緊急性、有り」

1巻 第一章 落陽と囚われの月 1節

0 4

暗くて色はよく見えない。だがその姿は明らかに異形だった
まず何といっても大きさが普通ではない。天馬の倍はあろうかという巨躯に、皮膜つきの禍々しい翼。そしてその頭部と思しき箇所には、三つの首が不自然に生えていた

1巻 第一章 落陽と囚われの月 1節

1 4

こんな場所から上を見上げたところで、何かが見えるはずがない。星はおろか、月も、そして太陽でさえ、マーヤは一度も見たことがないのだ。
それでもマーヤは確かに感じていた。この暗い峡谷の底で、いま何かが始まろうとしていることを

1巻 プロローグ

1 6

「冒険しよう!」
昔から親しまれている冒険物語
だけど、冒険ってなんだろう?
危険を冒さなきゃ冒険じゃない
ワクワクしなきゃ冒険じゃない
この後どうなるのか分からない
一歩先や闇、それが冒険なんだ
1巻『陽が昇らない峡谷』は、4月に配信です!

3 14

新作情報『テロメニア魔導記』
英題は『The Tome of Terromenia』に決まりました
略して『TTT』または『T×3』です!
小説自体が魔導書ってことですねw

第1巻『陽が昇らない峡谷』は4月配信予定
現代的な価値観で描く、古典的なファンタジー
めちゃくちゃ面白いので、ぜひご期待下さい!

9 20

ここ魔法王国テロメニアでは、魔法が使えない人間のことを『眠り人』と呼ぶが、よく言ったものだとカータは思う
魔法が使えない自分がどんなに目を開こうとしても、開いたはずの瞼の下に再び閉じた瞼が現れて、それが無限に繰り返されるだけなのだ

2巻 第三章 薄明に集う星々 1節

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「そういうコトない? 頭で考えてるコトと、心が訴えてくるコトが、噛み合わないってコトが」
少年の言葉にマーヤはハッとする
人は、常に正しさを実行する訳ではない。間違っていると分かっていても、心の訴えに従って、あえてその間違いを実行する事もあるのだ

第四章 燭光 1節

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「負けるかもしれない」
そう思うからこそ、物語は面白い
常に勝てるなら何の苦労もしない
リスクが高いから戦いを回避する
まだ力が足りずに勝てない事もある
次の勝利を信じて逃げ出す時もある
逃走は、そのリスク以上のリターンを得る為の第一歩
『テロメニア魔導記』の主人公は、よく逃げ出します https://t.co/1KCo7ipNjb

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その後運送業に転職し、明らかに執筆ペースは落ちてしまいましたが、私は書き続けました
全く別の物語の構想もありますが、私はまずこの物語をちゃんと終わらせたい。こうして産まれた物語が、『テロメニア魔導記』です
前作を読んでおく必要はありません。『テロメニア魔導記』からでも十分楽しめます

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