イラストで描けなかった劇物・毒物たち

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部屋の中は今まで通ってきたどの部屋よりも大きく、豪華だった。赤いカーペットが続く先に階段があり、他の場所よりも高くなったところに玉座が置いてあった。そこに、金色の髪をした若い男性が足を組み、肘掛けに肘をついて俺のことを見下ろしていた。

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(髪から水銀を垂れ流すせいで)料理を手伝えない水銀

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「もし、また、どうすればいいか分からなくなったら、そのときはお前を呼んでもいいか?」
そう言って彼が照れくさそうな顔で頬を掻いた。それを見て俺は柔らかく微笑んだ。
「うん。もちろんいいよ」
そう言うと水銀が照れたように頬を掻き、
「……ありがとな」とお礼を言った。

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「いやー、面白いものを見せてもらったよ」
背後から若い男性の声がした。振り返れば髪の長い中性的な顔立ちの男性が立っていた。彼の髪は青をベースとして紺碧や花浅葱などの様々な種類の青が溶け混ざったような色をしていた。その髪が光り、暗い鉱山内を儚く照らしていた。

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そう言って目の前に立った俺の首元にニトロが爆弾を押し付けた。俺はそんな彼を見て微笑むと手を伸ばし、頭を優しくなでた。彼の髪の毛はさらさらで、少しふわふわもしていた。
「!」
ぎょっとしてニトロが後退る。俺はそれに構わず頭をなで続けた。

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突然姿を現したのは黒い服で身を包んだ男性だった。目深く帽子をかぶり、スカーフで口元を隠している。
「お前……誰だ?」
水銀が俺を守るように前に立ち、彼に低い声で問いかける。
「……」
男性はこちらを探るように見ているだけで、何も答えなかった。

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扉を壊すような勢いで台所に入ってきたのはガスマスクをつけた謎の集団だった。軍隊のような物々しいボディーアーマーをつけた彼らの後ろに、控えるようにホスゲンが立っていた。
先程までの平和な朝の情景が一瞬にして崩れ、殺伐とした雰囲気の彼らに息を呑む。

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その視線を追って見ると、長い茶色の髪の毛の女の子が俺を睨みつけながら立っていた。彼女の右手にはナイフが握られていた。
「ちょっと、アンタ!邪魔しないでよね!」
そう女の子が頬を膨らませてカドミウムに怒る。
「もう少しで人間の息の根が止められそうだったのに!」

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見たことのない彼に思わず首をひねる。扉の閉まった音が聞こえたのか、彼が振り返った。優しそうな梔子色の瞳が俺を捉えて細められた。
「おや、もしかしてあなたが水銀が助けたという人間ですかな?」
穏やかな口調で彼が俺に話しかけた。

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「お前こそ、まだ酔っ払ってるんじゃないのか?いい加減メタノールを飲むのを控えたほうがいいんじゃないの?」
そう煽るように言うクロロホルムにメタノールが憤慨する。
「……多分、クロロホルムさんの言ってることが正しいんだよね?」と女性が困ったように笑った。

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「……貴様が水銀が助けたという人間だな」
なんの前触れもなく、後ろから氷のように冷たい声をかけられて心臓が跳ね上がった。
驚いて振り返ると、いつのまにか目の前に全身真っ黒な服を着た女性が立っていた。彼女の瞳は、酷くよどんだ青黄色をしていた。

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理科事変―トリプルゲスト
今は化学事変だけれど、物理事変や生物事変もいつか書きたいと思っています。

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「何言ってやがる、クロロホルム!俺は酔っ払ってなんかいねえ!」
クロロホルムの言葉にメタノールが怒って否定するが、相変わらずろれつが回っていなくて全く説得力がない。
そんなメタノールを見てやれやれとクロロホルムが首を振った。

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(ちゃんとお礼を言わないとな)
台所に入ると、硫酸が忙しそうに調理器具を洗っているのが見えた。
「あの……」
後ろから声をかけると、彼女がゆっくりと振り返った。そして俺を見て人の良さそうな笑みを作った。

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俺の手にあるガラス瓶を覗き込むように目線を合わせ、硫化水素が目を輝かせた。
「本当だ、綺麗……」
辺りに漂う腐卵臭がするガスをあまり吸い込まないように気をつけながら、俺はラジウムに見惚れる彼女を見つめた。

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