緑がかった蓄光肌は前科持ちの色だ。塀の中で出る蛍光食糧がそうさせる。今はこの男も自慢げに見せびらかせているが、遠くに見える赤い肌の男たちが店に入ってくればそれも変わるだろう。赤く光る肌は兵隊の色。血の色。規則の色。装置の色。緑色の肌が蒼ざめる瞬間こそがこの仕事の愉しみだ。

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賢者が常に懐に抱えているのは人類最後の冷凍食品だという。学者が手渡すよう言っても帰ってくるのは問いかけだけ。「これの消費期限はいつなのか?」手に入れなければ答えられないし、答えられなければ手に入らない。彼がただ単に死すら嫌がった極端な吝嗇家に過ぎないのを知る者は少ない。

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人通りは少ないがここは穴場だ。実ったあとダクトのそばに立っていれば香りに釣られて客は来る。おれはただ「熟している」のを示す果実の色の板を持っていればいい──売値は決まっている。まだ身体に余裕はある。まだ大丈夫なはずだ。これでまたやり直そう。そうしておれはただ待っている。#幻視版

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