君は私を「特別」だと言ってくれたね。
私も君は「特別」。
でもその関係にそれ以上の定義はなくて。そんなカタチも悪くないと思うのよ。
離れていても誰かといても、君と感じた夏の風や空で君自身を感じるの。
それって…定義のある野暮な関係より素敵じゃない?

『風薫る』

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「そんなの、当たり前じゃない。」
私は少し強めの口調でキミに伝える。
一瞬安堵にも歓喜にも見える表情を滲ませた後、それが永遠には叶わない事を知っているキミは諦めにも似た笑みを見せた。
夏の始まりを知らせる空が、対照的に、あまりにも眩しかった。

『燦燦』

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キミは笑っていた。
曇天を感じさせない澄んだ瞳で。
鬱々とした湿った空気の中で、その笑顔は綺麗に咲いていた。
そう、それは虹にも、紫陽花にも似ていた。

『梅雨咲う』




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