飛行機が青い空に
そっと線を引いているのを
私は目を細め見上げる

何時になればこの悲しみに
慣れるのだろう

そんな私の姿に呆れながら
でも優しく笑う貴方の声が
風に乗って耳に届いた

私はここで頑張るから…

蒼が滲む空に向かって微笑むと
私は前を向き直し、歩いていく

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夏休みが始まった

子供の頃から私になんでもダメって煩く言ってくる父親にも
これからはもう何も言わせない

私の事を…もう好きにはさせない

だって今は私の足元に転がってるから
もう好きには出来ないでしょ?

さぁ、今日から何をしようかな
まだまだ私の夏休みは始まったばかりだ

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あ…あのさ、お前そろそろ大学入学じゃん
向こうに行ったらやっぱサークルとか入るの?

俺はほら、もうすぐ警察学校だからよく解んないからさ

変な男に引っかかるなよ、お前騙されやすいから
頼もしい幼馴染は傍にいないんだから…

…いや、もう幼馴染は嫌なんだよ
ずっとお前の傍にいたい

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モニターの隅のデジタル時計が動く度に私の心が焦ってゆく
それなのに一文字も煌めくような文章が思い浮かばない

もう何本目?
エナジードリンクが机の端を占拠する

〆切はもう目前
間に合わない…

そう思うだけで私の頭は愛猫が乗っかってるかと思う位重く感じる

ん?これはいけるかも!

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仲の良い兄妹の仮面の下を誰も知らない。本当の僕らを。
何時からだろう彼女の視線が兄を見るそれで無くなったのは。その視線に気付くのに時間はかからなかった。
彼女の愛は誰よりも深く一途で愛おしい。

毎夜彼女の愛を僕が受け止めているという真実は、森の奥深くにそっと隠しておこう。

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婚約者を失った私を皆優しく励ましてくれる。親族席を遠慮していると、彼のお母様が是非一緒に送って欲しいと申し出てくれた。
その後ろ姿にそっと視線で私は伝えた。

彼は私を裏切った様な最低な男でした。
だから私が送って差し上げましたよ、と…。

私は地の果てに堕ちていくのかしら?

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気がつくと君は僕と瞳を交わさなくなった
喋っていても、笑っていてもどこか上の空で

僕はもう君の中で透明な存在になっているようだった

君と久しぶりのデートなのに
言葉少なげに先を歩く君を見やると
結った長い髪が揺れる合間に見慣れぬ朱い痣を見つけた

急に君の背中が遠くなった

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