連作碓氷峠がメインだったからそれ以外あまりかけてない。

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難所の碓氷峠を越えてもここは終点ではない。あくまで通過点でありこの軽井沢駅でも手早く補助電車の切り離しを行い後押しした列車を見送るのだ。
感傷に浸る間もなく離れるテールライトを静かに眠る山男と共にこの高原の駅は見続けるだろう。また再びこの地で相見えることを信じて。

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熊ノ平から大小15ものトンネルを抜けていよいよ峠のサミットに到達する。旧矢ヶ崎信号場で北陸新幹線と合流し横川駅から投入し続けたノッチを切り矢ヶ崎川を越えるとブレーキをキックオフして停車の準備に入る。軽井沢駅場内はもう目の前だ。

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碓氷峠は過酷な土地柄故に幾多の凄惨な事故の舞台ともなっている。この勾配区間唯一の平坦地熊ノ平も逆走事故と土砂崩落事故が発生し多くの人命が失われた。信号場であり駅でもあったこの場所も今は尊い命を悼み建立された母子像と共に列車が静かに通過するのを見守るのみとなっている。

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横川~軽井沢間11.2kmの標高差は553mもあり最大急こう配は66.7‰(1kmで66.7m登る傾斜)と国内の普通鉄道では屈指の急峻さで、この峠道を多数の隧道と橋梁で貫き克服している。
そして眼下の渓谷にはかつてのラック式鉄道時代の旧線跡が優美なレンガ造りの構造物と共に多数残されている。

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「ありがとうございました…ありがとうございました…」
釜めし売りのお礼と共に横川駅を発つと間もなく旧丸山変電所。機関車にも機関士にもひと際厳しかったこの路線は国鉄幹線最初の電化区間で蒸気圧と煤煙の死闘から解放された。
峠道の悠久の歴史を後に勾配はより一層険しくなる。

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ホームの喧騒とは裏腹に補助電車連結は厳かに進められる。
「お願いします。緩解。はい、込まったら制動。動作よし。はい、漏れなし。緩解。はい、制動試験完了。制動軸数100%。4番出発進行。」
連結するとすぐさまブレーキテストを行い出発に備える。いよいよ緊張の17分間が始まる。

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「まもなく横川、横川に到着いたします。横川では補助電車連結のため4分間停車いたします。」
関東平野を疾駆してきた特急電車は横川駅のわずかな停車時間で山登りの身支度を整える。同時にホームでは「釜めしいかがですか!」の名調子で俄かに賑わいが生まれる。ここは難所の玄関口。

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