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それでも解っていることがある、どんな状況下でもアサギはトランシスを愛しているということだ。ガーベラはそう信じている。
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トランシスは否定せず、喉の奥で嗤った。瞳が合った途端に、口角をにんまりと上げる。
『今頃気づいたの?』
そう言われたような気がして、顔が燃えるほど熱くなったガーベラは部屋を飛び出した。
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「ありがとう、トランシスならそう言ってくれると思ってた!」
彼の背に腕をまわして喜ぶガーベラは、トランシスが浮かべている表情を知らない。
瞳は、微塵も笑っていなかった。
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顔面蒼白で立ち上がったアサギは、俯いたままぼそぼそと何か呟いている。全く聞き取れないが、声が震えていることは分かった。
言い終らぬうちに、食堂から飛び出した。どう見ても、泣いている。
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アサギ。
その単語が発せられた途端に、トランシスの瞳が大きく開く。次いで、口角がゆっくりとあがった。
間近にいたガーベラには、その様子と感情の変化が残酷なほど伝わった。
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ガーベラは怯えの色を浮かべた瞳で、トビィをさりげなく見つめた。激しく怒り狂っている彼を止めることなど出来ないが、何故か「私は悪くない、トランシスに言い寄られてしまったの」と心中で言い訳をする。
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「おやすみなさい……ガーベラ、トランシスちゃん」
不信感が滲み出ている声に思えた。
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努めて柔らかい口調で、ガーベラは子供をあやすように告げる。顔を覗き込み、安心させるように肩を撫でた。
「……大丈夫よ、アサギは何処にも行かないから」
「なら……いいけど」
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「男の身体、そんなに珍しい?」
ニヤニヤと顔を緩ませ、トランシスが覗き込んでくる。言葉に詰まったガーベラは、頬を染めたまま視線を逸らした。
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「確かに、利害の一致ね」
トビィは、抱きたくもない女を抱く。
ガーベラは、抱かれたい男に似た男に抱かれる。
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ただ、トランシスにその気は全くなかった。
『傷は舐めて治せ』と教えられていたので、普段通り実行したまで。