楪姫冠。こいつも距離感のおかしいやつだった。小さくて歳を誤魔化しているんじゃないかと思った。今でも少し思っている。だがまあ中身はときどき変に大人びていた。俺のことを見るといつも少し不安げな顔をする。特に危害を加えた覚えはないが、能力を通した動物の本能で避けていたのかもしれない。
椎名雪月。無表情でちょっと変わったやつだった。一番年下だったがまるでそうは見えなかった。あれはそうあらざるを得ない状況で身についた大人っぽさだろう。子どもを守るのが大人の仕事だ。こいつは守られる側でいることを許されるべきだった。頼ること、甘えることを少しずつ覚えていったと思う。
三条愛斗。人懐っこくて、みんなに愛されているやつだった。能力あってのあの性格なのか、愛斗の性質に合わせて能力が生まれたのか、興味深い研究対象だった。こいつには能力を使わずにただ愛されてほしかった。いつか、愛されてるのが自分なのか能力なのか分からなくなる前に。
猪瀬悠一。明るくて爽やかで、空気を読むのが上手いやつだった。こういうやつの周りには自然と人が集まるんだよな。こいつは大切なものを守るためなら一生自分を犠牲にしていくんだろう。記憶が変わるとはいえ置いていかれるのはつらいもんだ。自己犠牲じゃなく、一緒に幸せになる方法を探してほしい。
ウィリアム・ネッガー。物静かで、他のやつらを見守っているようなやつだった。相手を傷つけないようにするためとはいえ、誰にでも知られたくない過去くらいはある。能力に頼らなくても人と付き合っていけるようになるべきだと思った。俺が見ている限り、それはきっと実現不可能なことじゃないだろ。
