//=time() ?>
「悪事を憎むなんてだれもが言うけれど、内心ではだれだって好きなんだわ」
「相変らずよくない本を読んでるんですね?」
「読んでいるわ。ママが読んで、枕の下に隠しておくから、失敬してくるの」
「自分を台なしにするようなことをして、よく気が咎めませんね?」
カラマーゾフの兄弟
「そうよ!あたしの考えをぴたりと言ってくださったわ。人間は犯罪が好きなのよ。だれだって好きなんだわ。そういう《瞬間》があるどころか、いつだって好きなのよ。ねえ、このことになると、まるでその昔みんなで嘘をつこうと申し合わせて、それ以来ずっと嘘をついているみたいね」カラマーゾフの兄弟
「いいえ、思ってませんよ……もっとも、ことによると、多少そういう気持ちはあるかもしれませんね」
「多少はあるわよ。あたし、あなたに対しては決して嘘をつかないわ」
彼女は何かの炎に目を燃え上がらせて、言った。
「人間には犯罪を好む瞬間がありますからね」アリョーシャが言った。
「ああ、あなたって大好き。信じますよ、なんて言うんだもの。あなたって全然、まるきり嘘がつけないのね。でも、ひょっとしたら、あなたをからかうために、わざとあたしがこんなことを言っていると、思っているのかもしれないわね?」
「いいえ、思ってませんよ…」カラマーゾフの兄弟
「そうだな。何か立派なものを踏みにじりたい、でなければあなたの言ったように、火をつけてみたいという欲求でしょうね。これも往々にしてあるもんですよ」
「だって、あたしは口で言うだけじゃなく、ほんとにやってみせるわ」
「信じますよ」
カラマーゾフの兄弟
「あなたは悪いことと良いことを取り違えているんです。一時的な危機ですよ。これは、ことによると、以前の病気のせいかもしれませんね」
「やっぱりあたしを見くびっているのね!あたしはただ良いことをしたくないだけ。あたしは悪いことをしたいのよ。病気なんか全然関係ないわ」
カラマーゾフの兄弟
「なぜ?十二かそこらの年で、何かを燃やしたくてたまらずに、放火する子供だっていますからね。一種の病気ですよ」
「嘘よ、嘘、そういう子供がいたってかまわないけれど、あたしが言うのはそのことじゃないわ」
カラマーゾフの兄弟
「それこそあたしの望むところだわ。あたしが行って裁きを受けたら、あたし、だしぬけにみんなを面と向って笑ってやるわ。あたし、家に火をつけたくてたまらないの、アリョーシャ、この家に。あたしの言うことをちっとも真に受けてくれないのね?」
カラマーゾフの兄弟
「あたしが神聖なことを話さないんで、ひどく腹を立てているのね。あたしは聖女になんかなりたくないの。いちばん大きな罪を犯すと、あの世でどんな目に会うのかしら?あなたならちゃんと知っているはずだわ」
「神さまの裁きがありますよ」
アリョーシャは食い入るように彼女を見つめた。
もしあたしが貧乏になったら、だれかを殺すわ、金持になっても殺すかもしれない。ぼんやりしているのなんていやですもの!あの人、こまみたいなもんだわ。精いっぱいまわして、鞭でびゅんびゅんたたいてやるといいのよ。あなた、あたしの相手なんかしているのが恥ずかしくないの?
カラマーゾフの兄弟