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櫻の花は
妖異を持って
誰かに手折られるのを
待っている
静かに静かに
はらはらと
その時は来る
花弁を踏みしだき
幹をめりりと
怖ろしい鬼とはあなたのことだ
それでも抑えた涙が止まらないのは
やはり私の我儘でしょうか
攫ってゆくからと
春の幻は何時までも瞼の裏で
ゆらゆらと光の揺らめきのよう
少年は裏路地を歩く
櫻の花びらが通りを舞い
古いマッチの匣を鞄に忍ばせて
その中に何が這入っているのですか?
ヤモリです
いいえ人の骨
瓦は人の秘密を抱えて黙ったまま
空は青を抱いて眠る、春
あんたは長生きするよ
狐の面の子供が
瓦屋根の上から嗤って言う
たしかその向こうには大きな神社が
夢の後先みたいな朝には
昨日の妖怪が肩にこびりついている
只、ひそやかな古きを語ろう
この町の大人しか知らない秘密を
子供達は囁いている
冷たい朝の水は喉の裏で
地球の行く末を案じている
孤独がゆっくりと腰を上げて
木枯らしに舞う木の葉も
群れを成して飛んでいる渡り鳥も
知らなかったように
人魚の夢を見てから
妙に生臭い物が欲しくなる
遠くの海では蜃気楼が桜色に
煙草の煙をくゆらすと
幽かに娘の顔が見えた気がする
ひとけのない通りに
白菊ばかりが植えられている
夏ばかりが愛おしくて
洗面台の蛍石が人魂のように夜光る
通りでは雲水が
托鉢をしているから
大判焼きの釣りを捧げた冬