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カラフルな図版は華やか。骨の図は色がモノトーンになりがちだが、領域分けに色が使える。J. E. Frazer "Anatomy of the human skeleton" (1920)
ポール・リシェ『美術解剖学』は1890年から現代まで多くのコピー図を産んだ。美術のみならず医学書にも使用されている点が非凡である。添付は神経の分布図に使用されたコピー図(1914年)。出どころはリシェの古巣のサルペトリエール病院。
半棘筋、多裂筋、回旋筋からなる横突棘筋。これらの筋群の一つを剖出するには、その周辺の横突棘筋を破壊しなければならないため、観察されたと思しき図が極めて少ない。こうしたメディカルイラストレーションの無人地帯はまだまだある。Lanz "Plastische Anatomie"より。
昨日ツイートした筋肉模型は、somso社のas3というモデル。19世紀末に出版されたドイツの美術解剖学書に同様の姿勢をした図がある。詳しい来歴は不明だが、著者のクリストフ・ロートは彫刻家で、モデルは近代ボディビルの父ユージン・サンドウかもしれない。
解剖学では「普通って何?」の回答を明確に用意している。5割以上の発現率で観察できる構造のことである。しかし、全身が標準構造すなわち普通で構成された人体は、私は見たことがない。
上腕を水平あたりまで外転または挙上させると、前方では烏口腕筋、前鋸筋、広背筋肋骨部が見えるようになり、後方では肩甲骨の内側縁が外向きに傾斜し、三角筋後部に隠れていた小円筋が見えるようになる。つまり表現や再現できる起伏が増え、その結果、作品の見所が増える。
解剖図は19世紀中頃の大判リトグラフもしくは20世紀初頭の写真製版の図が最も様々な要素が描写されている。当時の教科書は記述も詳細で、観察量の多さが図に反映されたと考えられる。版画やペン画のクロスハッチングは、起伏の説明には良いが、決め打った線であるのと線と線の間の情報がやや抜ける。
フランスの医師Antonin Bossu (1809-98)の解剖学書。医学書だが、美術解剖学と共用可能に計画された教科書で、骨、靱帯、筋の第5図までが美術解剖学と共用、それ以降の内臓、血管、年齢差が医学用になっている。こうした体裁の書籍なら、骨と筋以外にも興味が湧いた芸術家もいただろう。