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本日は日本美術解剖学会で骨格筋の発表をさせていただいた。私の発表後、東大の遠藤先生がサラッと「(発表スライドの)凄さは伝わったと思いますが、大変さは伝わらないでしょうね」と言われた。なるほど、現場を知らなければ大変さは共有できない。しかし、すごさは伝わる可能性がある。
体表と内部構造の図を並べて見比べるレイアウト。この配置は芸術家の学習に有効だろう。Julien Fau "Atlas de L'Anatomie des Formes du Corps Humain"(1845)
3枚目のジャン=バティスト・レベイユは、ニコラ=アンリ・ヤコブ(1,2枚目)の弟子。師から弟子に高い水準で描画技術が継承されている。描いている現場をそばで見ていたのだろう。
解剖図の描き方にも色々あるが、現実には存在しない理想的人体を描く場合、体表からスタートして内部を推測するスーパーインポーズ法(1,2枚目)と、骨格からスタートしてその上に筋をモデリングしていく方法(3,4枚目)がある。
ヘラーの人物デッサン(20世紀初頭)。古代ギリシャ、ルネサンス、新古典主義、人体表現を極めた時代は色々あるが、それぞれ様式的。見たままに近い自然な人体像が描かれるようになったのは19世紀ごろからじゃないか。
講習会で、クリーチャーの資料になりそうなウェットな資料はないかと聞かれたが、「病理学(Pathology)」の教科書の写真や図は使えるかもしれない。Kelly, Howard A. "Operative Genecology vol.2" (1906).
解剖学書は編集方法によって、主に系統解剖学(骨や筋など系統ごとに解説する)と、局所解剖学(部位ごとに骨や筋を一緒に解説する)に分けられる。系統解剖学は座学、局所解剖学は素描などの実習に使いやすい。
絵の描き方を聞かれることがあるが、個人的には、文字を読んだり言葉で聞いて納得するよりも、自然物や良いと感じる作例とそのプロセスを見る方が良いと考えている。脳の視覚野(後頭部)と言語野(こめかみの上)は、位置が離れているからである。
西洋美術館の常設展で新収蔵のラファエル・コランの油彩画を観た。コランは東京藝大2代目美術解剖学教授、久米桂一郎のフランス留学中の師。のちにパリ国立高等美術学校で教鞭を執る。1枚目左:『楽』(1899)、右:『詩』(1899)。
中間層の筋は、皮下に観察できる範囲を示すと、美術解剖学を学ぶ人にとって理解しやすくなる。もっと踏み込んで、触知できる範囲を示せば、医療にも応用できるだろう。