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腹に異様な熱さを感じると共に、槍をしっかりと握っているのに末端が冷たくて、何も感じない。
そして次に、其の腹の熱さの原因を見て三九二は目を見開いた。
「無様だな、妖と人間は分かり合えないのに。妖である糜爛様がお前如きの存在など目に掛けるわけないだろ?」
「黙ってください。再三言いますが、巫蠱様はそんな御人じゃありません」
「黙るのはお前だ三九二碧桜。糜爛様ならお前など一捻りで殺せたんだ。それなのに」
見つめる先、流れるのは虫特有の青い血液。其れは刃先を、柄を伝い、三九二の手を濡らした。
泣きそうなぐらい震える声の三九二を慰める様に、両手で抱き締めていたのを片手を外し、頭を拙く撫で始める。
「ええもん持ってんな〜、結婚指輪?……あんがとなぁ」
ハルジオンを象り、月光に反射した其れは小さな指輪であった。
金目の物を探していた阿巳に取っては絶好の品物である。
投扇興。飛んで来たのは月光を反射しつつ空を切り裂く鉄扇であった。
渾身の力で投げられた其れは、間違える事無く桔梗を狙い、其の白い肌に太く、一線の赤を散らした。
春の兆しの見える陽光は鬱蒼とした木の青々しい葉にチラチラと反射しては地に細く降り注ぐ。向こうから響く愉快な声がその日の陰を踏んでは走り進んでいた。
「待つネー!!!!」
「嫌だよ〜☆てか何でそんな追いかけて来るのさ!!!」
「今晩は、退魔師のお二人さん」
「……何しに来たんだ?仲良くお話って訳じゃなさそうだけど」
人の良い笑みを一生懸命取り繕っている鋏。ただ、その手に持つ刃物は夕焼けでギラギラと反射し無理やり上がった口角は不規則に引き攣っている。