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そもそもの話、こちらの事情を説明したところで井家表に何かができるはずもない。彼はあくまで国から派遣されてきたいち職員=「特派員」であり、積極的にこのプロジェクトを推進する側の人間なのだ。
「え?まさかお前たち断る気?俺は別にいいけど、そしたらかなり重い罰金か警察に捕まるけど~?」
とりあえず、家にあげた井家表に康太たちは自分たちの状況を説明しようとした。が、案の定、井家表はそんな康太の話など聞く様子などなく開口一番に自分の欲望を語った。
そこに黒山夫婦の状況を慮る様子は皆無…
あの頃から何も変わっていない。そして、そんな奴にいま夫婦の運命は握られていた。
さらに、夫婦にとっての災難は続く。
数日後、黒山夫妻の元を訪れてきた「涼音の遺伝子提供パートナー」=「特派員」は彼らのよく知る人物。高校時代、よく涼音にちょっかいをかけてきていた学校でも有名なヤリ●んだった「井家表良太(いけおもてりょうた)」なのであった。
そんな事があったからこそ、今でも二人は夫婦として暮らしている。子供はあくまで授かりもの、もしできなくても二人が別れる理由にはならない。
康太の中には今も自分に対する否定的な気持ちが少しあるが涼音の明るさがいつも支えてくれた。
それゆえに最近は何か上手く行っているように感じていた。
まだ若い彼女は他の男とやり直しがきく。(幸い彼女は引く手あまたの美人だ。×が一つ付いたところで問題ないだろう)そんな考え口にしたこともあった。
しかし、その事に関して涼音はこう答えた。
「離婚なんて絶対、嫌。例え二人の赤ちゃんができなくてもこー君と一緒に生きる未来がいい!」と
いまから7年前(結婚から3年後)、不妊に悩んだ涼音と共に訪れた病院で、その原因が「康太の方にあった」ことが分かる。二人の間に子供ができないのは彼の生来の体質(遺伝的か、後天的かはわからないが)により元々の精●量が普通の一般男性より極端に少ないためだと発覚した。
二人の間にある重要な問題…それは「子供がいない事」であった。
この10年、決して避妊を繰り返していたわけではない。むしろ、涼音が子供好きな事もあって積極的に二人は「子作り」を行っていた。しかし…二人の間に子供ができることはなかった。
傍から見れば、これ以上ない順風満帆な人生
スタイル抜群な美しい(おまけにちょっとえ●ちな)妻に、小さくも手に入れたばかりのマイホーム。仕事にだってやりがいを見出し、男としてこれ以上は望めないほどの幸福な日々…だが、それは二人の間の「とある重要な問題」について目をつぶればの話である
涼音はそれを受け入れ、「黒山涼音」となった。
そして二人が夫婦になってから、10年の月日が経った。それだけの時間があれば夫婦仲が冷めるカップルも少なくないが、二人は幼馴染の恋人だった時から相も変わらず良好な関係を築いていた。(ありていに言えばラブラブな状態を維持していた)