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澄の表情が訝しげなものに変わる。
怪訝に寄せられた眉に、少しだけいつもの彼が戻ってきたような気がして、曦は密かに安堵した。
「ええ、無羨からは蓮の咲く時にする音は俗信だと聞いていたのですが、確かにしたのです」
あの瞬間の軽やかな音は、いまだ曦の耳の奥に焼き付いている。
実は全く期待されていなかったことに気がついて項垂れる曦を、澄が呼んだ。
「藍宗主……、いや、藍曦臣、こんなに美しく咲かせてくれて……感謝する」
曦の心の臓が、とくりと跳ねた。
曦に向けられた澄の顔には、確かに笑顔が浮かべられていた。
出された小皿をそっと手に取り、澄は静かに息を飲んだ。
「……咲いた…のか…。…本当に…」
「ええ、とても美しい花です」
まるで貴方のようにーーーーと言いかけて、口をつぐむ。自分でも何てことを言いかけようとしたのか、驚いてしまった。
けれど、杏仁型の瞳を溢れんばかりに開いてじっと蓮を
朗らかな笑顔を見せることもなくなり、一人でいる姿をよく見かけた。
まだ細い肩に大世家の跡取りとしての責を負い、きゅっと結ばれた唇が彼の持つ真摯な覚悟を物語っているようで、曦は似た立場のものとして、何か彼を支えられないものかと秘かに思っていた。だが、実際には彼が一番苦労していた時に
「沢蕪君、元気になりましたね」
「……そうでしょうか」
「ええ、顔色もだいぶ良い」
閉じこもっている間彼らにどれだけ心配をかけたかを思い出して眉を下げる曦に、羨が軽い調子で、
「気にすることないですって。家族なんだから、いくら心配かけたっていいんです」
「……ありがとう」
まずは叔父の方へ…と、掃き清められた石畳を歩いていると、ふよふよと紫の蝶が曦の頭上を旋回する。
澄の返信だ。
【蕾が開く頃、そちらへ伺おう】
それだけ告げると、蝶は空気に溶けた。
そうか。蕾だ。
ということは、
「君は、これから咲くんですね」