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薄い玻璃のような殻からひょっこりと姿を表したのは、蓮の蕾と葉であった。
「江宗主! 生まれました! 蓮のつぼみです…!」
興奮のままに霊力を紡いで伝令蝶を雲夢に飛ばした。
寒室の窓から飛び出していく蝶を見送ると、曦はあらためて生まれたばかりの蓮花と向き合う。
ーーーーぴしり。
耳の聡い藍氏の、中でもとりわけ鋭い聴覚を持った曦だからこそ、その幽かな音に気がつけた。
ぎくりと、手にしていた書をそっと卓に下ろす。
懐から巾着を取り出すと、恐る恐る卵を取り出した。
「……あ」
卵のちょうど中心に小さくひびが入っている。
しばし考え、ふと昼間の羨との会話を思い出した。雲夢は今頃、もう雨に包まれているのだろうか?
するりと指が動き、静かに息を吹き込む。しっとりとやわらかな旋律がのびやかに、不知処の夜闇に流れる。
いつだったか雲夢を訪れた際に耳にした、子守歌だという曲は、卵に聴かせるのに相応しいだろう
笑いが止まらずにいると、先ほどよりも小ぶりの伝令蝶が窓から飛び込んできた。色は紫。間違いなく澄のだ。
「……?」
指先に受け取り、霊力を流すと、またひとこと。
【別に貴方を救おうとか、そういう大層なものじゃ、ない】
少し早口のその言葉に、今度こそ曦は声を出して笑ったのだった。
蓮の卵の話。付き合ってない曦澄
「藍曦臣、これをやろう。蓮の卵だ」
どうせ閉じ籠っていて暇なのだろう?ーー、皮肉に口端を歪めながら彼が曦の掌にそっと置いたのは卵だった。
はて、彼はなんと言った?
蓮の……たまご……
「ちゃんと育てろよ」
素っ気なく言い置いて、澄は雲夢へ帰っていった。