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HIROKI HONJOさんのイラストまとめ


趣味は社会科学と酒。猫好き。
自動車メーカーの窓際社員。
「戦う飛行船」(共著 イカロス出版 2022年)、「ツェッペリン飛行船団の英国本土戦略爆撃」(2020年)
論文:「三代広重が描いたフランス蒸気軍艦『ブルターニュ』」(「浮世絵芸術」187号)
NHK BS 「ヒンデンブルク号の悲劇」(2021年)スタジオ出演

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祝いに駆け付けたウェリントン公爵(ワーテルローでナポレオンを破った立役者)は、礼装をロンドンの邸宅に忘れてしまい、電報と汽車を用いて急いで取り寄せ、謁見の時間になんとか間に合ったという逸話も話題になりました。

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【電信 19世紀のグローバル情報ネットワーク】

1840年代に実用化された電信は、瞬く間に欧米諸国に普及しました。19世紀後半には大陸間を連結する海底ケーブルも建設され、電信網は世界を覆います。
この結果、社会や経済、軍事の在り方は大きく変容。人類史上初の近代的情報革命が生起したのです。

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しかし、陸軍のLZ5に対する評価は芳しいものではありませんでした。否、正しい評価を陸軍は下せずにいました。彼らが飛行船に求めていたのは、飽くまで戦術的な偵察能力と、対地支援攻撃能力であり、ツェッペリン飛行船が有する並外れた航続力と搭載能力は明らかにオーバースペックだったのです。

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その頃、新大陸では異変が生じていました。19世紀末、米国のコーヒーと茶の消費比率はおよそ9:1。その小さな茶市場を巡って中国茶と日本茶が死闘を演じていたところへ、英国植民地産の紅茶が殴り込みをかけてきたのです。

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紅茶の消費量の増大と共に砂糖も多く使われるようになりますが(英国人一人当たりの年間消費量は、1800年に茶2ポンド弱・砂糖20ポンド弱、1900年に茶6ポンド・砂糖80ポンド)、主な供給地のカリブ海の島々では黒人が非人道的な環境で働かされ、土地の疲弊も深刻だったのです。

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紅茶こそは、豊かで広大な植民地と巨大な工業力・テクノロジーを有し、海上交通を支配する大英帝国の覇権と繁栄の象徴に他なりません。
1884年、英国のある軍人は次のように記しています。

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こうして見てみると、茶が英国の女性王族に如何に愛好されていたかが良く分かります。そして中国からの輸入量が増え、価格も安定すると、茶を飲む習慣は貴族から中産階級の女性へと一気に広がっていったのです。

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こうしてティーはイングランドの宮廷に根付きましたが、供給路をオランダに押さえられている以上、消費量の拡大には限界がありました。
そして正にこの時代、英国とオランダは海上覇権を賭けて壮絶な死闘を繰り広げていたのです(三次に渡る英蘭戦争、1652年~1672年)。

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1690年代、英国東インド会社の輸入金額に占めるコーヒーの割合は8.1%、茶は1.4%でしたが、1750年代にはそれぞれ3.8%と22.6%になります。そして1760年代、茶の割合は39.5%に達し、最大の輸入品目にのし上がったのです。この頃、英国は欧州に輸入される茶の3/4を消費していました。

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これにより蘭仏両国ではコーヒーが愛飲されるようになる一方、アラビア半島南端のモカからコーヒーを輸入していたイギリスは価格競争に敗れ、嗜好飲料を茶に代替していくのです。熾烈な重商主義的貿易戦争が展開されていた当時、戦略物資を競合国に依存することは許されませんでした。

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