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【エミリー/マイケル・ビダード バーバラ・クーニー絵】 お向かいの黄色い家、二階の左側の部屋に住む謎の女性。その人は20年家から出ることなく詩を書いているという。ちいさな部屋で、おおきな世界に触れて生きていたエミリー・ディキンソンと少女のあたたかな交流。 詩も球根も、いつか花ひらく。
【きらめく共和国/アンドレス・バルバ】 小鳥のさえずりのような言葉で話した32人のこどもたち。どこからともなく現れ、そしていなくなった。純真さと残酷さが渾然と宿る魂も、あの子たちが作ろうとした世界も消えた。静かにきらめく無数の光を残して。大人たちが手放した問いに悲しみだけを刻んで。
【呑み込まれた男/エドワード・ケアリー】 ピノッキオを捜し海獣のお腹で生きるジュゼッペの物語。蝋燭にゆらめく影は愛しい人たち呼ぶ。彼はかつて命なきものから命を生み出したように闇の中から過去を取り出し命を吹き込んでいく。永遠の孤独と向かい合って。 “何て愛しいものだろう、命というのは”
【もうひとつの街/ミハル・アイヴァス】 雪降りしきるプラハの古書店。存在しない文字で綴られた菫色の本がもうひとつの街へ導く。降り注ぐイメージと言葉に翻弄され、裏側から染み出してくる声に現実の輪郭が揺らぐ。時間は崩れ落ち、目的地は消え、私たちはこの世界に閉じ込められているのだろうか。
【目で見る言葉で話をさせて/アン・クレア・レゾット】 かつて誰もが手話で会話した実在の島。メアリーは連れ去られる。生きた標本として。人はみな違うのに。空を見て、海を見て抱く思いは同じなのに。差別と偏見に満ちた日々を生き延びた彼女が選んだもの。物語と会話でいっぱいの手が語りかける。
【くじらびと/2021日】 インドネシアの島で400年鯨を獲って生きてきた人々。彼らの生も死も海にある。銛一本での命がけの戦い。小舟の舳先に立つマラファ。海から帰らない者たちの魂が宿るオウムガイ。畏れと敬意。掟と報い。生きること。食べること。この世のいのち。彼らは鯨と同じ目をしていた。
【少年の君/2019中香】 痛い痛いと心が泣いている。その声は誰にも聞こえない。震えながら伸ばした手を誰も見ようとしない。だからこうするしかなかった。君を守るために。暴走する社会が生んだ絶望から。どうすればよかったというのだろう。言葉になることもなくただ流れる涙。光のあたる場所へ。
【宮沢賢治の鳥/国松俊英 舘野鴻:画】 あぁそうか、だからあの鳥だったのか。敬意に満ちた解説と考察に導かれ、賢治が愛した鳥たちに再び出会う。緻密で美しい絵に頁をめくるたびに心が震える。風のささやきや星の光からもらったお話たち。鳥に託した賢治の祈りがイーハトーブから羽ばたき時を超える。
【ファミリア・グランデ/カミーユ・クシュネル】 フランスを揺るがした本書は単なる告発ではなく、決して癒えることのない傷を負った人たちが震えながら生きた日々の証。守られるべき時に守られなかった者の為の決意。過去と未来を自分の手に取り戻そうとする彼女は、沈黙を拒み私たちを見つめている。
【スーパーノヴァ/2020英】 愛した人が消えていく。愛した人をひとり残していく。それぞれの逡巡。ふたりが何を選んだかではなく、ふたりがどのように生きたかを星々は静かに見つめる。劇中では重なることのないピアノの音色とチェロの響きが、深い余韻の淵でいつまでも互いを探すように漂っている。