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「餌付けか……?」
目の前の滑稽な状況に眉を顰める。草を手に跪く姿が小動物に餌をやっている様に見えた。
(まあ、判っていての悪ふざけだろうが)
随分なご執心だなと呆れ半分に笑う。跪かれている方も戸惑う素振りはあれどどうやら満更でも無いらしい。朴念仁にもその位は何となく理解できた。
『大丈夫ですかお嬢さん』
どこかおどけた調子の声。顔を上げれば、傍に片膝をついて拾ったヨモギの一本をこちらへ恭しく差し出す彼の姿が目の前にあった。芝居がかった気障な仕草が、嫌味な程よく似合っている。相変わらずの優男――。
「やあ、また会えたね」
目が合うと、彼はにこりと微笑んだ。
「いったぁ……」
腰を擦り身を起こす。頭が少し眩ついた。痛みと情けなさで視界が滲む。路の真ん中で突然派手にずっ転けたものだから、周囲が少しざわついていた。路行く人々の視線が痛い。
(ああ、このまま消えてしまいたい)
今すぐこの場を離れたくとも、しかし直ぐには立ち上がれそうもない――
『貴様は些か賢し過ぎる』
故に、与する相手にはなりえない。
故に、殺す。
恨みも怒りも憎しみも無い。
在るのは互いに相容れぬという現実だけだ。
利き腕を壊された男は、蹲りながらも怯まずこちらを睨め付けている。
油断ならぬ相手と、重々に承知していた。
「故に――」
《次で、仕留める》
『秘密のままにしていれば、ずっと傍に居てくれるのですか?』
驚いて顔を上げる彼を、胸に抱き寄せ直して言葉を続ける。
「貴方でも、そんな顔をすることがあるのですね」
私が笑うと彼は少し拗ねた様子で黙ってしまったけれど、その日はずっと傍に居てくれました。
《ごめんなさい。何れ必ず――》